第7話ゴンザレスとグレーターデーモン②

 No.2の名前を呼びながら、メメは駆け出した。


 は、速い〜!


 あっという間に沼の対岸の更に奥、薙ぎ倒された木々や大木の中で戦うNo.2のところへ向かって行く。


 メメは、やっぱりそれなりの強さを持っていたに違いない。

 どう見ても並の身体能力ではない。


 呆然としかけた俺は、ハッと気づいた。

 こうしては居られない!


 俺は逃げるぞ!!!!


 森を抜けるため、走り出そうとした。


 しかし! タイミング悪いというか何というか、No.2が何十メートルもこちら側に弾き飛ばされる。


 それをメメが拾い直ぐにコッチに帰って来る!!


「やめろ! コッチに来るな!!」

 俺は必死に叫ぶ。


 俺の叫びを無視して、木々を抜けながら、真っ直ぐ此方に逃げてくる。


 こっち来んな、言っただろぉぉおおお!!


 俺は必死に違うところに、行っちまえと合図する。


 そうするとNo.2を背負ったメメは、きっちり俺が指差した方向にカクッと進路を忽然と変えた。


 その結果、何が起こるかというと……。


 あっらぁ〜、グレーターデーモンさん?

 相変わらずイカしたツノねぇ〜。

 ちょっとこっち見ないでくれないかしら?


 突然、グレーターデーモンさんの視界から消えた2人の代わりに、あのお方の目に入るのは、わ・た・し。



「グオオオオオオオ!!!」

 気合いの入った雄叫びをする素敵な貴方はグレーターデーモン。


 沼の中に突っ込んでまで、真っ直ぐ俺の方に向かおうとする。


 来るなぁぁぁああああ!!!!!!


 俺は必死に火打ち石を弾き、さっき沼に突っ込んだ木に小さな布を巻き火を付ける。

 その間、僅か数秒!

 俺的快挙!


 勢いよく火のついた木を沼に投げ入れる。


 結果を見ずに沼の中のグレーターデーモンに背を向け、出来るだけ近い大木の裏に飛び込むように……。


 ドンっという音が聞こえた気がした瞬間、空間から音が消えた。


 一瞬だけ記憶が飛んだ気がする。


 辺りは激しい炎に包まれる。

 俺は立ち上がりとにかく走った。


 森の木々は次々と燃え、正直生きた心地はしなかった。


 行きしに森を歩いた時間よりもきっと長かった気はするが、森を抜け川のほとりに着くと夢中で水を飲んだ。


 生水を飲まないように気をつけていたが、今は仕方ない。


「や、やったぞ……! 逃げ切った」


 俺は立ち上がり森の方を見る。

 森は激しく燃え、数日は燃え続けるだろう。


 とんでもない被害を出して……。


「……しーらね」

 俺はとにかく少しでも早く帝国から逃げ出すことにした。

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