第161話ゴンザレスと年貢の納め時①

 世界最強と呼ばれる存在がいる。


 曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。

 曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。

 曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者

 曰く、最強にして無敗、世界の叡智の塔に刻まれるランクNo.1も超えた最強ランクNo.0


 だが、その正体は一切不明。

 男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵様だとか、転生者とか、生まれながらの救世主だとか、魔王を指先一つで討伐したとか、数え上げたらキリがない。

 それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。


 それが、世界最強ランクNo.0





 どうも、アレスです。

 最近はゴンザレス呼びも増えてしまいました。


 詐欺師です。


 詐欺師なんだよ?


 どっかの公爵様でも、ハーレム王でも、総司令官でも、ましてや世界最強ランクNo.0でもないからね?


 誰か詐欺師の俺を信じて?

 信じてくれたら騙すけど。


 ああ……カバに連れられて何処へ行く……。


 なんでカバに追いかけられたのか。

 謎は直ぐに解けた。


 カバに運ばれて来たのは懐かしの木の実のなっている巨大な木の下。

 つまり、俺に取って来いと。


 カバはカバの欲求に正直に従ったということだ。


 ヘビの魔獣に怯えながら一生懸命に木の実をカバに投げつける。


 汗が吹き出して木から滑り落ちそうだったので、拭く物を探して懐をごそごそ。


 すると狙ったようにタイミング良く突風が吹きマーカーが風に飛ばされ……魔王城があった辺りまで飛んで行くのが見える。


 ああ……イタズラな風さんが俺の金貨20000を運んで行く……。

 俺はそれを茫然と眺めるのみ。


 魔獣の居そうなあんな場所まで取りに行く勇気はない。


 意気消沈しているとカバは動き出す。

 俺を置いて。


 まずい!

 こんなところに置いて行かれてたまるかとカバの背に飛び込む。


 なんて自由なカバなんだ!!!


 そうして、さらにカバは移動する。

 俺は取って来た木の実を齧りながら、世の無常を感じるしかなかった。


 ただのチンケな詐欺師だったはずが、本当になんでこんなところに居るのか、さっぱり理解出来なかった。


 カバは誰に止められることもなく、懐かしのゲシュタルト王都を横切り……。


 そのまま海の中に突入。


 俺はがぼがぼ、と溺れかけながらなんとか港の岸に戻る。


 ……そして、カバは海に帰って行った。


 お前海から来てたのかよ!!!


 ずぶ濡れのまま、俺はとぼとぼ歩く。

 宿に行きたい。


 たまたま居た衛兵らしき人に、風呂に入れるところを聞くと案内してくれるらしい。


 とぼとぼとついて行く。


 でもね?

 昔から言われてることだけど、知らない人について行ったらダメだよ?


 何処に連れて行かれたかって?

 王宮だよ!!!!


 な〜んか豪華な建物に向かってるなぁと思ったよ!


「ゴンザレス様……」

 そこに美人な第3王女様登場!!


 感極まったように抱き着かれました。

 嫌じゃないよ?


 ちょっとずぶ濡れだから先にお風呂入りたいかな?

 そう伝えると。


「え? ご一緒にですか?」

 ポッと顔を赤くされる。


 積極的だな、おい。

 ヤダよ? 王女様、国とセットだもん。


「いえ、1人で」


 残念そうにされた。

 また可愛いんだ、これが。

 国さえ! 国さえなければ!!

 ちょっと、つまむぐらいいじゃない?

 ちょっとだけ……ちょっとだけ……。


 とまあ、色々葛藤したんだけど、結論から言うと手を出してしまいました。

 第3王女S級美女だから、欲望を増幅された状態だとゴンザレス抵抗出来るわけないの。


 世界の叡智の塔の影響恐るべし!

 その日のうちに逃げました。


 国の唯一の継承者王女様と関係を持ってしまいました。

 そして逃げた。


 これでもう国家レベルの犯罪者と言って過言ではない。


 また、やっちまった……。







「自業自得だよね?

 あんた、だんだん節操なくなってない?」


 紆余曲折、星見の里に帰って来ました。

 お金まだ貰ってないし。


 そして、里には何故かエルフ女とナユタが居ました。

 俺は約束の古文書を広げながら涙に暮れる。


「世界の叡智の塔の所為なんや〜」

「あんたの欲望って……まあ、そうなんだろうねぇ〜……」

 後ろのソファーで寝転ぶエルフ女に呆れられたが、その通りだから仕方ない!


「S級相手に我慢とか無理だ!

 今まで我慢して来た俺の忍耐を褒めてくれ!」


「結果的に手を出したら一緒よね?

 今度こそもうチンケな詐欺師とか言うの無理よね」


 うう……。


「それとさぁ〜。

 そろそろ、私たちをそのS級美女と呼ぶのやめてくれない?」


 なぬ?

 S級美女はS級美女だが?


 古文書を広げたまま、その言葉に思わず振り返る。

 エルフ女はえらく優しげな、そしてS級美女に相応しい魅力的な笑みを浮かべる。


「クズな男に惚れるような女は、S級美女とは言わないよ?

 それは本当に見る目を持った女に失礼よ?


 ……それとも、あんたいい加減認めてくれるの?

 アタシたちをのが、偶然なんかじゃないって」


 な、なんだと……!?


 エルフ女!!

 突然、なんばいいよっとね!?

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