第21話とある部族のゴンザレス②
「隣村との争いを止めてください」
……やめればいいじゃん?
「自分たちでは止めれないのか?」
なんで?
自分たちで好き勝手に争ってるだけじゃん?
ナリアちゃんのチチが俺の疑問に答える。
「無理だ。原因は水の奪い合いだからな」
へぇ〜。
水が不足する土地には思えんけどな?
大きな森の中だ、砂漠の土地なら話は分かるが。
「この土地は飲み水として使えるものが少ないのだ。
神に許された泉ではない限り、飲んでしまうと神の怒りにより、激しい痛みによりもがき苦しみ死んでしまう」
ほほー。
神の怒りね〜。
んー。
「その許されない泉、案内出来る?」
俺はナリアちゃんの方を見て尋ねる。
男はついて来なくてよろしい。
「ナリア。案内してあげなさい」
「はい」
お! ナリアちゃん頼むよ!
案内されたのは、部族の村から少し離れた場所。
人気は……ない。
ニヤッと。
「ナリアちゃん」
彼女を優しく、引き寄せる。
「あ……」
あ、だって! かっわいい〜。
そのふっくらとした柔らかな宝石の唇をそっと奪う。
ふふふ、今はここまでにしておこう。
契約だからな、仕事が終わった後、美味しく頂こう。
彼女の潤んだ瞳に軽い微笑みで答えながら、彼女を放す。
「さて、水は……透明度は高いな。
ナリアちゃん? この水を使用することについては怒りに触れないのかな?」
潤んだ瞳でぼ〜っとしていたナリアちゃんは、ハッとして。
「え、ええ。ですが、神の怒りを恐れて使う人はいません。何か分かったのですか?」
「恐らくね。この水が使えれば、争う理由は無くなるかい?」
「はい、ここさえ使えれば、今後、争う必要は無くなると思います」
俺は、仕事の完了後に期待を膨らませる。
「ならば、任せたまえ。
その代わりいくつか試したいことがある。協力してもらうよ?」
俺はとっても素敵な笑顔で、彼女をまた抱き寄せその瞳を見つめる。
はい、と彼女は俺にもたれかかった。
クックック、たっのしみだー!
いくつかの検証の後に、俺は村人たちを集めた。
男は葉っぱのみなのだが、女性はナリアちゃんと同様なカラフルな民族衣裳だ。
「なんと!? あの水を飲めるようにしたというのか!」
「ああ、神に正しい手順により捧げる事で、神の許しを貰った。
やって見るから見ているが良い。
まずは神に許しを請う」
水を鍋に入れて火にかけ、むにゃむにゃ適当に言いながら沸かす。
「次に神にその水を捧げる」
砂利と木炭を敷き詰めた木箱に、その水を注ぐ。
「こうして神が許してくれた水のみを口にする」
捧げた水が木箱より流れ出るので、それを飲む。
「これで神の許しを得らええるだろう」
俺は村人を見回す。
要するに水に寄生虫がいたんだろうねぇ。
とある本に書かれていた症状と状況全て同じだった。
「うんばほー! うんばほー! 神の使徒の降臨だー!」
村中から、大歓声が上がる。
話を聞きつけ、隣の村からも村人が様子を見に来て同じようにうんばほー! と大歓声を上げる。
トレアちゃんは来なかった。
チクショー。
いや、だがいい、俺にはナリアちゃんがいる!
村はその日、飲めや歌えのお祭り騒ぎとなった。
俺とナリアちゃんは、その喧騒から抜け出し、人の居ない場所へ。
何をするのかって?
ヘッヘッヘ、報酬を頂くのさ!
彼女を優しく抱きしめると、潤んだ瞳で目を閉じる。
ふっくらと柔らかな唇を奪い……。
そして……ん?
んー?
パッとナリアちゃんを放す。
不思議そうな顔の、美少女……?
「ナリアちゃん……。キミ、モシカシテ……」
ナリアちゃんは美少年でした。
「うわーーーーーーん!!!!」
俺は走った!
ただひたすらに走り、村を立ち去った。
元男はいいけど、男の娘はあかんのやー!!!
この日、滅びる運命にあった部族が救われた。
その者は、神の使徒の叡智により、その部族に命の水を与えた。
だが、その者は自らの名を告げることもなければ、与えられた報酬を受け取る事もなく、立ち去った。
その崇高な志に、皆、ある存在を想起せざるを得なかった。
世界最強No.0
世界ランクを刻む世界の叡智の塔。
そこには未だNo.0という番号は、ない。
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