幕間:あの時のアレスの本音
第0話とある詐欺師のプレリュード
世界最強と呼ばれる存在がいる。
曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。
曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。
曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者
曰く、最強にして無敗、ランクNo.1も超えた最強ランクNo.0
だが、その正体は一切不明。
男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵家の捨て子だとか転生者とか生まれながらの救世主だとか、数え上げたらキリがない。
それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。
それが、世界最強ランクNo.0
そもそも世界の叡智の塔とは、いつから何故現れたのかも不明な、各大国の首都に存在する。
その塔に刻まれる世界共通のランクのことを世界ランク。その1〜10のナンバーに名前が載ってる者をナンバーズと呼ぶ。
ランク外は世界の叡智の塔には表示されない。
各国は世界ランク外認定のため、独自ランキングを導入。それにより各国の示威行為の一つとしている。また、冒険者ランクもその一つ。
冒険者ランクSSSまであれど、世界ランクナンバーズには敵わない。ただし、最強と呼ばれた勇者キョウ・クジョウについては、ナンバーズ並の強さが有りながら、何故か世界の叡智のランクシステムには反映されない。
一説には異世界の者はランク対象外なのではないかとの噂がある。
そして、塔に刻まれる世界ランクの最高はNo.1。
そこには未だNo.0という番号は、ない。
だが、とある詐欺師は
元々そんなのいねぇよ、と。
帝国の田舎街。
かつては商業連合国の一部であったが、今は帝国の街。
そこの酒場で一生懸命働く若い娘。
名をエスパーニャと言った。
無論、源氏名、偽名だ。
茶色がかった黒髪を後ろで一本にまとめて、優しく気立ての良い娘で働き出して然程経っている訳ではないが、酒場の看板娘として病気の母と幼い弟たちの生活をたった1人で支えている。頑張っている。
元々はそれなりの商家の娘で、従業員たちからは親しみを込めてお嬢、とも呼ばれていた。
当時は親に反発して遊んでばかりだったが。
その娘に最近、足繁く通う1人の男。
どう見てもチンケな詐欺師という風体で、銀髪。
着飾ればそれなりのイケメン。
着飾ればね。
その男が語るホラ話がより一層変わっている。
胡散臭いと思いぞんざいな扱いをしながらも、エスパーニャはその男の話が嫌いではなかった。
まるで父から買ってもらった本の物語のよう。
それはそう、例えばこんな話。
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