第91話ゴンザレスとゲシュタルト④

 今、明かされる衝撃の真実!


 まさかの脳筋集団と思っていたゲフタルの連中が、この国では超有能だと気付かされた。


 知りたくはなかったし、そもそも関わりたくなかったぁぁあああ!!


 ゲシュタルトの連中こそ、究極の脳筋なのだ!!


「とにかく、戦え! そして押し返せ!

 まずそれからだ!」


 戦姫の隣のマッチョ爺さんが、突撃を指示。

 ランス構えた騎士隊は、突撃すると凄く強い。


 横からの魔獣の突撃に凄く弱いけど……。


「……君たち、よく今まで滅びなかったね?」

「勇壮なる騎士たちの力のおかげですよ!

 父も上の2人の兄も立派に名乗りを上げて、散っていきました」


 戦姫は胸を張る。

 褒めてないから。


「ねえ? 君たち……。

 作戦って言葉、知ってる?」


 流石に詐欺師に指摘される王族ってどうなんだ?


「もちろんです!

 馬鹿にしないでください。

 使ったことはありませんが!」


 戦姫とマッチョ爺さんが、はっはっはと笑う。


「使えよぉぉぉおおお!!!」


 ダメだ、コイツら。






 元々、ゲシュタルト連邦王国の戦争は騎士たちだけの儀礼的なものに近かった。


 もちろん戦争なので死人は出るが、騎士たちが名乗りを挙げながらランス構えて突撃して戦争をする横で、農民たちが畑を耕すような牧歌的なのか、そうでないのか、緊張感のかけらも感じないものであった。


 それが突然の生存を賭けた戦争だ。

 ゲシュタルトの苦戦も当然だろう。


 むしろこの地方で言えば、臨機応変に戦い方を変えたゲフタルこそが優秀だったと言える。


 グリノアはよく分からない。


 とにかく突撃さえ上手くハマれば、とっても強い騎士団の奮闘でどうにかこの日は乗り越えた。


 ダメだこの国、滅びるわ。

 逃げられれば1番だが今回はチャンスを待とう。


 この国は滅びても俺だけは生きよう。





「ゴンザレス様ー! これからどうしたら良いでしょう?」

 城に帰ると早速、金髪の儚げ美女の王女様が俺に聞いてくる。


 いや、知らんよ。

 詐欺師に聞くな!!

 自ら詐欺に突っ込んで来ないで!


 儚げなのは見た目だけか!?


「せめて罠でも作ったら?」

「どんな罠ですか!」


 おかしいな、この王女様の後ろにブンブン振る尻尾が見える。


 なんだかとっても疲労感を感じた俺は、あろう事か、ただで作り方を教えてあげてしまった。


 予感があったのだ。

 報酬を要求すると、それこそ国(世界)の半分をくれてやろうとか、平気な顔して言いそうな雰囲気が。


「何処に仕掛けたら良いでしょうか!

 人員はどうしましょう!」


 地図を持って来させる指示をすると、王女様が地図を持って走ってくる。

 王女様、自ら持ってくるな!


 そこのマッチョ爺さんも止めろ!

 いやぁ、ワシ、頭はからっきしでの〜ムキッ。


 じゃねーよ!!!!


 仕方ないので俺が生きるためにアドバイス。


「では、全てそのように」


 王女様、待てや、コラ。

 なんで全部言う通りにするんだ?

 疑えよ。

 待て、なんでマッチョ爺さんと2人で首を傾げる。


 え? 俺が間違ってんの?


「軍の配置はどうしましょう?

 この間、総司令官のケーロット伯爵が殉職なされたので、総司令官は名実共にゴンザレス様です」


 王女様、待てや、コラ。(2回目)


 なんで総司令官が前線で名乗り上げてんの?

 そして、名実共に総司令官ってなんだ!?

 名も実もとったことねえよ?


 おかしいだろ? まず常識を持ってくれ。


 マッチョ爺さん、ムキッツ!


 じゃねーよーーーー!!!!!


 もうよく分からないが、考えつく限りの罠を準備させる。


 人員?

 街の人間いるだろ?

 魔獣と人との戦争は違うぞ?


 狩人とかに罠の作り方指導してもらえ!

 魔獣は警戒心の薄い動物と一緒だ。


 あと名乗り禁止!

 魔獣相手に名乗ってどうなる!

 馬鹿なの!?


「えー! 名乗りはロマンなのにー!」


 王女様! 可愛くむくれんな!

 可愛いけど、ダメだ!


 アンタに手を出すと、王様にまでされるというあり得ない想像をしてしまう!


 え? それは良い案です?


 目をキラキラしてこっち見んな!


 おい! マッチョ爺さん! 止めろよ!

 ムキッツじゃねぇ!


 おまえそれやっとけばいいと思ってるだろ!?


 詐欺師が、王に!


 成れるかー!

 させるなよ!

 フリじゃないからな!?


 俺は王になんてならんぞ!!!

 ならないからなぁあああ!!!


「あと援軍! ゲフタルに援軍要請して!」

「何処を通って要請しますかな?

 陸は全て魔獣に封鎖されておりますぞ?」


 今となっては、俺が商隊と通ってきたルートも魔獣が溢れかえっているらしい。


 追い込まれ過ぎだ!

 ここまでヤバいなら、なんで魔王討伐軍をゲフタルに向かわせた?


「え? リーダーを迎えに行くからって言うから、それじゃあ仕方ないねって」


 王女様は可愛いらしく小首を傾げる。

 マッチョ爺さんは笑顔でムキッツ!


 ダメだ、コイツら……。


「海……。

 海から回って援軍連れて来い……」


 王女様は小首を傾げる。

「海、ですか?

 しかし海も魔獣が……」


 海軍を呼んでもらう。


 あ、魔王討伐軍の船乗りの兄ちゃん。

 アンタは留守番してたのね?


 沿岸沿いを抜けるルートから、援軍を連れてくるルートを提案。


 全軍でなくてもドリームチームだけでも連れてくれば、十分。


 船一隻なら通れるルートあるでしょ?


 お願い、俺に敬礼しないで?

 君ら俺をなんだと思ってんの?


 ゲシュタルトの命運を賭けた総司令官で、世界の運命を背負う魔王討伐軍のリーダー?


 ほんと、俺、誰だよーーーー!!!!

 詐欺師に命運なんか背負わすな、滅びるだろうが!!!!!

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