外伝38インターミッション:ゴンザレス、教師になる1

「人を呪わば穴二つ、はい、この意味は?」

 俺の言葉に反応して素直な子供たちが素早く手を挙げる。

 中には両手、ついには両足まであげようとしてすっ転ぶ子供。


 うむ、見事なり。

 そんなすっ転んでまで答えようとする気合いの入った子供を指名する。


「はい、ケイタ。答えは?」

「人を呪うと自分が損する」


 うんうん、素直な良い答えだ。

 でも。


「ブッブー違います。人を呪うときこそ隙だらけ、よく注意しましょう」

「また、微妙な解答を」


 俺の名回答をエルフ女がツッコミを入れる。

 黙ってなさい、副担任女教師。

 後でベッドでお仕置きいたしますからね!



「さて次、願えば夢は叶う。さて、この言葉の意味は?」

「意味〜?」

 首を傾げる子供たち。


 子供たちはまだ夢を追い、現実には直面していない。

 まだ、早すぎたようだな。


 代わりに隣に腕組したエルフ女が答える。

「そのままなんじゃないの?」

 なんでおまえが答えるんだよ。


 はい、とお手手を挙げたケニーが指名してもいないのに答える。

「一生懸命お願いしたら神様が夢を叶えてくれる?」


 俺が何か言う前に別の子供がさらに言葉を続けていく。

「違うよ〜、叶えてくれるのはサンタさんだよ!」

「サンタさんは違うよ、親だよ! お父さんに妹が欲しいとお願いしたら妹を連れてきてくれたよー。代わりにお母さんが怒って出て行って、知らないおばちゃんも一緒に来たけど」


 闇が深ぇよ。

 お父ちゃんは別でガキをこさえてたな。


 俺はその話をしてきた可愛らしい顔のメアリーに優しく告げる。


「そのおばちゃんにいじめられたらすぐゴンザレス先生に言うんだよ?」

 そのおばちゃんをお父ちゃんから寝取ってやるから。

 もしくはメアリーのお母ちゃんをもらってやろう、きっと美人だし。


「うん!」

 元気そうに返事をしているから大丈夫そうだ。


「うちはお母ちゃんに言ったら、コウノトリさんが連れてきてくれたぞ! ちなみにコウノトリを売ってるおじちゃんと何度も会ってお腹に赤ちゃんもらったって! でも、これ母ちゃん秘密ね、と言ってたから秘密なんだ!」


 うんうん、コウノトリを売ってるおじちゃんがその赤ちゃんのパパだからね?

 これ以上、クラスの闇の部分に触れないように俺は話を締めにかかる。


「願えば夢が叶う。これの正解は、あらゆる手段を使って、正しい方法を見つけ出し、幸運に恵まれたならば願いはある程度、叶う。ただし、そうやって唆されて騙される可能性は非常に高い、だ」


「あんた……夢も希望もない話してない?」

 気のせいだ、エルフ女。

 現実はいつも世知辛い。


 転生とか明らかに無理のある設定が一般的になってしまった物語なみに世知辛いんだ。


「触れてはいけない話にさらっと触れるのやめなさいよ」

 それはともかく。


「このように言葉にはさまざまに裏がある。皆も真実を正しく読み取る訓練を怠らないように!」

「はーい!」

「それでは今日はこれまで、起立! 礼!」

「ありがとうございましたー!」

 そう言うと同時に子供たちは一斉にバラバラと教室を出て行った。


「あれ? おかしいな、間違ってないのに間違っている感じるのはなぜかしら?」


 こういうのが詐欺の手口だからな。

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