第28話【魔王編】一気に飛んで、エルフ師匠、通称エルフ女登場裏話

 世界最強と呼ばれる存在がいる。


 曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。

 曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。

 曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者

 曰く、最強にして無敗、世界の叡智の塔に刻まれるランクNo.1も超えた最強ランクNo.0


 だが、その正体は一切不明。

 男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵家の捨て子だとか転生者とか生まれながらの救世主だとか、数え上げたらキリがない。

 それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。


 それが、世界最強ランクNo.0


 だが、とある詐欺師はかたる。

 元々そんなのいねぇよ、と。




 メメちゃんから逃げた時間は飛び……、ゴンザレス砂漠にいます。


 あ、失礼、アレスです。

 詐欺師です。


 でも不思議です。

 詐欺師なのに海賊になったりしました。

 奴隷になるのは妥当な気もしますが逃げ出しました。


 海賊や奴隷の裏話?

 そんなもんあるかい!


 どんな背景があるっていうんだ。

 詐欺師にはお似合いの環境だねってことだけだ!


 余計なお世話じゃぁぁああああああ!!!


 あ、奴隷娘は可愛かったな。

 怖いマッチョ共に囲まれてたから、ちょっかい掛けれなかったけど。

 あれって滅びたユーロ王国の姫と騎士団だよね?


 ウラハラ国の小娘と違って騎士団のマッチョどもも一緒で、1人じゃないからなんとかなるだろう。


 どっちにしても騙して俺だけ逃げた。


 奴隷になった奴らも一緒に解放しろって?

 無理無理、チンケな詐欺師に何が出来るってんだ?


 ま、奴隷だろうとなんだろうと生きてればこそってやつさ。


 あと途中、小娘にも再会というか助けてもらった。


 ついでに元ウラハラ領現カストロ公爵領で奴隷解放した面々に、まるで俺が奴らのご主人かのような態度を取られ不思議ワールドも経験しました。


 ねえ、噂は聞いてたけど、ウラハラ領は本当にカストロ領になったんだねぇ〜。


 へー、で?

 カストロ公爵アレスって……誰?


 誰にも聞いてないよ?

 聞きたくないし。

 俺、ただの詐欺師だから。


 そんな中、俺は砂漠にいる訳だがこれにはちょっとした理由がある。

 俺も自分でなぁ〜んで、こんなことしてんのかなぁ〜、と思うんだけどさ。


 このままだと、魔王に世界滅ぼされそうなんだよなぁ……。


 いきなりなんだ!?

 そう思うだろ?


 いやさあ、ナンバーズが半分殺されちゃって大変だけどさぁ〜。

 なんとか半分は生きてる訳よ。


 早急に勇者のキョウちゃんと連携して動けばいいし、動かないと魔王が完全復活しちゃう訳よ。


 ところがこの間、再会したキョウちゃん、世界ランクナンバーズほど強くなかった訳で……。


 聖剣とか剣聖の担い手のこと、国の上層部はちゃんと分かってるのかなって。


 ……存在は知ってると思う。

 各国も個別には探しているだろうけど、何処にあるかはまるで分かっちゃいないようだ。

 過去の伝承を書いた書物がほとんど残ってないせいだな。


 聖剣については、剣聖の担い手が導くものらしいから俺も場所は知らない。

 魔王を倒せる、すんごい武器らしい。


 剣聖の担い手というのは、勇者の教育係というか装置(?)みたいなものらしい。


 エルフという想像上の種族で、大エルフの象徴たる世界樹という名称の『システム』に縛られている。


 残念だが、この『システム』というのがどういう意味か残っている書物はない。

 ある特定の魔法の契約のようなものだと俺は解釈している。


 それに対して誓った言葉を破るのは、エルフである剣聖の担い手にとって最大の禁忌、つまり『システム』により出来なくなる。


 どういう意味かというと、ある食べ物を食べると誓った場合、それを食べないでいる行為が出来ず、食べるための行為を取らなければならなくなる。


 コレが『システム』の穴だ。

 注意事項として、わざわざその書物には書いてあった。

 説明書だったんだろうね。


 エルフの担い手を強制的に従わせるためのもので、人権もクソもあったものではない


 んで、なぜ今、それを説明しているかというと……。


「アレス〜、やっぱ、あんた。

 アタシを騙したよね〜?」

 後ろから、その剣聖の担い手のエルフが俺に付いてきております。


 はい、詐欺に掛けて連れてきました。

 ついでにその麗しいお身体も美味しく頂戴しました。


 我が身体貴方に捧げましょうと大エルフの象徴たる世界樹に誓わせましたので、以後、このおマヌケエルフは俺のモノです。


 ヤッタネ!

 皆! 詐欺には気をつけよう!!


 これにて密林の中の『魔法空間の中での待機』というくさびを外し、後はこのエルフ女を勇者キョウちゃんにお届けして魔王を倒してもらうだけです。


 この『魔法空間』というのがクセモノで、今では完全に失伝された技術だが、異空間を作りそこにこのエルフ女は待機していたのだ。


 勇者召喚もそれと同じ技術が使われているが、同様にすでに失伝……と言いたいが、それについては残っていたようだ。


 勇者キョウちゃんは召喚されてこっちの世界に来てしまった。


 よりによって危険な方だけ残っているのがタチが悪い。


 この勇者召喚というのは、邪神のエネルギーと呼ばれる非常によろしくないエネルギーが一緒に世界に流れ込んできてしまうのだ。


 それは今はともかく。


「騙してないぞ! 人聞きの悪い。

 最近のエルフはすぐ人を疑う。

 純粋なエルフ女は一体何処に行ってしまったんだ!?」


 おいおい、と俺は泣き真似をする。


「そう? 本当に騙してない?

 なら、良いんだけど」


 このエルフ女、チョロいな。

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