第7話ゴンザレス王、悪徳領主を成敗?②

 はい、どうも。

 現在、わたくし領主邸に来ております。


 正確には、連れてこられました。

 領主の応接間らしき部屋で、ロープでグルグル巻きの状態です。


 部屋には、高級品らしき宝石やらで着飾ったいかついおっさんと、極悪組らしきアフロ男数人。


 へい! 今日も大ピンチだぜ!?


 王様、最早これまでか!

 いやいや、諦めてはダメよ、ゴンザレス!!

 交渉よ! 交渉するのよ!!


「コイツが極悪組をのして、街の住人共にこのワシをどうにかしてくれと頼まれていた奴か?

 そんな風な猛者もさには見えんがな?

 む? 目覚めたか?」


 そうですね、そんな猛者ならグルグル巻きになんてされません。


 俺は大切なもの(己の命)を守るため、グルグル巻きの簀巻き状態だが領主を見上げ言い放つ。


「これはこれは、領主様!!!

 こんな格好で失礼しやす。

 ちょこっとだけ、お話聞かせていただきやした。


 あー、全く極悪組の兄さん方……と言っても、1番悪いのはアフロのあにいなんですがね?」


 それを言うと、聞いていた極悪組が俺を蹴りつける。

 ちくしょう、後で覚えてろよ?

 あ、いえ、忘れてくれて結構です。


「げっほごほ、いやいや、そもそもが誤解なんでさぁ」

「ふむ、申してみよ?」

 偉そうに大物ぶって領主は俺に問う。


 俺は経緯を丁寧に説明することにした。


 しっかしまあ、なぁ〜んで『こういう奴』は自ら危険に突っ込むかねぇ……。

 近くに居るのは世界を代表する化け物のあのお方よ?

 そんなお方が居る側で悪事を働けば成敗されるわよ!

 放っておけば……まあ、今回はどっちにしても終わったか。


 ……その過程の中で俺が消されるかどうかで。


 あっかぁ〜ん!!!!

 それが1番あかん!


 何がなんでも俺は生きるんや!!!

 生きて! ゴンザレス!

 生きるのよ!!!


 俺は情熱を持って生きるために、涙ながらに説明(詐欺)した。


 チンケな詐欺師の俺が可愛い『田舎娘を騙して』、お金とお身体をゲットしようとした。


 すると、あまりにも美味しいカモ風の田舎娘だったためにアフロのあにいたちもまた、『偶然』俺ごと田舎娘に絡んだ。


 そして、その田舎娘がその実、それはそれはおそろしいほど強い化け物だったこと。

 でも可愛かったから、あにいたちがやられた後で、俺がそのままなし崩しに夜のベッドで頂いちゃったこと。


 その悲しいチンケな詐欺師の想いを熱く、切なく語った。


 その結果、アフロ男たちは泣いた。

 領主は引いた。


 俺の熱い想いは底辺で生きる者たちには響いたのだ。

 彼らも辛いのよ?


 目だけでアフロ男たちとやり取り。

『やっぱ、偉い人には俺たちの辛さなんてわっかんねぇよなぁ』

『そだなぁー』

『ああ、全くやってらんねぇや』

 心の声が聞こえるかのように態度で、俺と同調してくれる。


「領主様どうします?

 コイツは俺たちと同じですぜ?

 地べたの辛さを知ってる奴でさぁ」

 アフロ男が俺を擁護するように、親指をグッと立てる。


 俺はにっこり笑顔。

 うん、一緒にすんな。


「うぅむ、そうか。

 ならば、どうしたものか?」


 俺としてはこのまま解放してもらい逃げるか、領主邸に入り込んで処分されるいたいけな書物たちを救い出して逃げるか、である。


 ただどちらにせよ、だ。

 問題点のすり替えをここで行っておこう。


「俺、思い出したんですが……あの例の小娘。もしかしたら……世界ランクNo.6に、似てないですか?」


 部屋に居る全員が一斉に騒つく。

「な!? 馬鹿な!

 世界ランクNo.6はこの国の王の女だと聞いたことがあるぞ?

 いくらなんでも、それはないだろう?」


 領主はそう言いながらも動揺を隠せない。


 そうだ、それが行きずりのチンケな詐欺師に抱かれるなんてそんな話はない。

 ないったら、ない!

 だから俺は更に畳み掛けようとしたその時。


「た、大変です! 領主様!

 奴らです! アフロのあにいをのした小娘がこっちにやって来ます!

 な、なんでも『No.0を返して貰いに来た』とかよく分からないことを言ってるらしく……」


 ツバメーーーーー!!!!!!

 あんた、なんばいいよっとぉぉおおお!?


 ゴンザレス覚えあるの!

 この展開、とっても覚えがあるの!!

 交渉が出来そうな展開になりかけた時に、No.0を助けに来たと称して『何故か』世界ランクナンバーズが突入してくるの!


 そうよ!

 当時世界ランクNo.10だったイリスが突撃して来た時と同じ展開なの!

 こんなことってある!?


 やめてぇぇえええ!!!

 ゴンザレスはNo.0じゃないの!

 王様を返せと突っ込んで来られるのと、どっちがマシか分からないけれど!!


 というかツバメちゃん、よくここに居るって分かったわね!?

 貴女もイリスと同じ犬だったの!?


 俺が内心大慌てしていると、高級品らしき宝石やらで着飾った厳ついおっさん領主が椅子から立ち上がり、驚きを露わにする。


「な、なんだと!?

 No.0といえば、伝説の化け物ではないか!

 話によると新王がそのNo.0だとか!?

 だとすると……不味い!」


 ヤケにあっさり信じるたな、あんた!?

 中身は純真無垢な悪人領主なのか!?


「領主様どちらに!?」

 アフロに返事もせずに、走り出す豪華なおっさん領主。


 下では早速、騒ぎが起きて壁が粉砕している豪快な音がする。

 建物壊れるんじゃない?


 またアクロバットで縄を解かないといけないの?

 次こそ死んじゃうかも!?


 そう思っているとアフロ男が縄を解いてくれ、粋な笑顔をニヤリ。


「逃げな。

 No.0の女に手を出しちまってヤバいんだろ?」


 とっても素敵な笑顔で親指を立てるアフロ男。


「アフロ兄さん……」


「よせやい、俺は兄さんなんて器じゃねぇぞ。

 ……俺はあにいに憧れてこの業界に入った。

 そのあにいの仇を討たないといけねぇからな!」


 扉の前で遠い目をするアフロ兄さん。

 アフロのあにい……こんな世界にこのアフロ男を引きづり込んで、本当に罪深いヤツだったな。


「いけ!

 俺たちの夢のために!」


 アフロ兄さんがそう言った瞬間、扉が猛烈な勢いで吹き飛び、その扉に巻き込まれ窓すら突き破りアフロ兄さんは落ちていった。


 アフロ兄さぁぁあああああああん!!!!


 ……俺らの夢ってなんだ?

 まあ、極限状態でよく分からんことを言いたくなったんだろうな。


「あ、アレスさん居た!」

 空いた扉の向こうには、蹴りポーズのままのツバメちゃん。


 さらば、アフロ兄さん……。

 迎えが来たから、俺、行くよ。

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