第19話疑惑のゴンザレス③

 そんな訳で、お嬢さんこと、ソーニャ・タイロンと俺は2人旅となったわけだが、これが思いの外、悪くなかった。


 超が付く美人と2人旅である。

 まさにロマンスに予感。


 降格してもナンバーズの化け物である。

 無理矢理でも襲ってしまえば、瞬殺だ。


 だが、この女はNo.8の女とは違う点がある。

 こちらを殺しに来ないのと、手を出しても重く無さそうなことだ。


 そうと決まれば、俺はあの手この手で口説いていく。

 まさに恋のロマンスと言えよう。

 なかなかガードが固いのがたまに傷だな。








 私、ソーニャ・タイロンは激しく後悔していた。

 ひー! この男ベタベタ触らないでよ!

 気持ち悪い!


 あんたに気なんかあるわけないでしょ!


 ちょ、ちょっとそこで影で見てる奴、助けなさいよ!


 あら? 何、手紙?


 えー、ソーニャ様任務です我慢して下さい。決して、ソーニャ様が慌てふためく姿でほっこりしている訳じゃありません、部下一同より。


 どういう意味よ!


 うー、ソーニャ我慢よ、我慢。

 魔力も感じられないこの弱そうな男がNo.0かどうか確認出来るまで……。


 ここまで弱そうで、部下の尾行にも気づいていないなら、流石にNo.0はないんじゃなくて?

 え? ダメ?


 分かったわよ、我慢するわよ!









 楽しい時間は、あっという間に過ぎるものである。

 ついにエストリア国王都に到着してしまったのだ!!!


 あー、結局、ソーニャちゃんは落ちなかった。

 もう一歩だと思ったんだがなぁ〜。


 好意は抱いてくれてる筈だ。ソーニャちゃんは、常に笑顔だったし。口の端がピクピクしてたのは、何故か分からなかったが。


 気をとりなおして、俺は仕事を始める。

 手始めに俺は、王都で1番の娼館に通い詰めたのだ!







「ナーニやってんのよ! あの男は!」

 私、ソーニャは憤慨していた。


「ソーニャ様……、今日の娼館からの請求書です。

 今回は2人ほど身請けしたとのことで、帝国で生活の世話をしてくれと……」


 あの男は、調査と称して、いくつもの娼館を回りながら大豪遊、そして、ツケの支払い先は帝国。

 毎日毎日……。


 渡された報告書は、ティーチェちゃんは巨乳、トレアナちゃんは優しげな笑みがチャーミングとか娼館のことばかり!


「とっちめてやる!」

 そう言いながら男を捕まえてみれば、


「俺は無罪放免な筈だ!」

 とほざく。


「そんな訳あるかー!」

「約束しただろ!

 『性行』して金を貰ったら無罪放免だと!!!」


「下ネタかー!!! 出てけー!!」

 堪忍袋の尾が切れて、男をエストリア国の秘密拠点から追い出した。


 男は、チクショー! 俺のハーレムがー! と言いながら出て行った。

 人の金でハーレム作ろうとするんじゃない!


 騒がしかった男が居なくなり、次の日、部下の1人があの手紙片手に駆け込んでくる。


「これは!?」


 その手紙には、帝国と隣接する辺境伯たちの詳細な情報。弱点、女の好みが書かれていた。


「何処でこれを?」

 あの手紙は嫌々ながら全て目を通したが、そんなことは一つも書かれてなどいなかった。


「この手紙を始末しようと火を付けると、突然、文字が浮かび上がりまして……」


 炙り出し!?

 魔法ではなくて?


 炙り出しの技術は、秘匿とされ特定の部族が使うのみだと聞く。

 大体の国は魔法研究が進み、暗号やその解読には魔法を使うのだが。


「しかも、身請けした女がこの情報を持っていたようで……どうやらエストリア国貴族の秘密を話してもらう代わりに身請けしたようで……」


 その話を聞きながら、部下と共に愕然とした。


 さらに後で分かった事ではあるがまた別の手紙には、やるべき仕事は果たした。これで無罪放免だ、約束を守れよ、と書かれていたという。


 一体、あの男はいつからこんな事を計画していたのか?

 初めから、無罪放免の条件を付けた時から計算していたのではないか?


 言い知れぬ不気味さを感じながら、ソーニャはただあの男の書いた物を眺めるしか出来なかった。





 その日、ソーニャ・タイロンを始めとする帝国密偵大隊は、世界ランクNo.0と思われた男を追っていたが結果はシロ。


 不気味な才能の片鱗は見せたが、世界ランクナンバーズを超えるような強さはただの一度も読み取ることが出来ず、くだんの男はその姿を消した。



 世界ランクを刻む世界の叡智の塔。

 そこには未だNo.0という番号は、ない。

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