第9話ゴンザレスとグレーターデーモン④

 メリッサは最後に3人にこう告げる。

「さて……、私はご主人様の元に行かねばなりません。


 ……ご主人様は自身がNo.0であることを広められることを好みません。

 この事は帝国上層部だけのトップシークレットでお願いします。


 あとカレン姫様にお伝え下さい。ご自愛を、と」


 すすけた格好であったが、メリッサはその場で優雅に一礼する。


 そこに居たのは、帝国の帝国第3諜報部隊並びに帝国ランクNo.1のメリッサではなく、元レイド皇女であり現No.0のしもべのメメだった。


 その立居姿は公爵令嬢ソーニャ・タイロンから見ても、高貴なる姿であった。





 この日、世界は戦慄する。


 追い詰められていたはずの世界ランクNo.2カレン姫が救出され、数十万の魔獣が森と共に殲滅された。


 帝国上層部は皆、口をつぐんだが真実はまことしやかに噂された。


 全てを為したのは、世界最強No.0。


 世界ランクNo.1の上に表示された『魔王』、そして灰色に染まったナンバーズ。


 だが、人々は絶望しなかった。

 この世界には、世界最強No.0が居るのだから。


 世界ランクを示す世界の叡智の塔。

 そこには未だNo.0という番号は、ない。






「というわけで〜、今宵は君と一晩のメイクラブって事で、どう?」

「え〜、でもちょっとお金弾んでくれたら、メイクラブ行っちゃうかも!」


 ウヒョ〜!


 あ、ども、詐欺師アレスです。

 ゴンザレス? 誰それ?


 帝国の森から抜け出し一週間。


 脇目も振らず移動して、帝国の隣のバーラト商業連合国の港街に到着した。


 だから英気を養う意味で、飲み屋のバーバラちゃんにお声がけをしていたという訳だ!


 無事に交渉も上手く行ったので、早速……。


 そこに……。


 店に入って来た瞬間から、誰もが振り向かずには居られない美貌とオーラ。


「どいてください」


 哀れな飲み屋店員バーバラは、その美貌の主にそう声を掛けられた瞬間に俺から飛び退いた。


 呆然と俺はその美貌の主メメに目を向けた。


「困りますね、ご主人様。変な病気を貰われたら私にも感染うつりかねません。

 以後、女性関係は私が管理いたしますのでどうぞよろしくお願いします。」


 微笑を浮かべ、その美貌の主は俺にしなだれかかる。


 俺は固まったまま。

 その美貌の主の謎の威圧に耐えられるほど俺は厚顔無恥ではない。

 完全に悟ってしまった。


 俺は手を出してはいけないものに、手を出してしまったのだと。


 色々な意味で、ヤッチャッタ!


「ご主人様。

 ナンバーズを除けば、帝国最強を自負致します私を撒けるとお思いでしたか?


 残念ですが私はご主人様のものです。


 以後置いて行くことのないよう、ご注意下さいね。分かりましたか?」


 そうしてメメは俺の耳元に口を寄せ、

「ご・主・人・様?」


 俺は震え上がりながら、何度も首を縦に振るしかなかった。

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