第141話革命家ゴンザレス④
「エーベックさん。貴方がばらしたのですね?」
ナユタは自白した犯人に語りかける憲兵のように静かな声でおっさんに告げた。
俺の頭でなんだか物悲しい曲が流れる。
チャ〜ラ〜ラ〜。
俺は捕まらないように気を付けよう……。
とにかくこの場を逃げたいのですが?
「エーベック! 何故だ!」
ヒゲオヤジがエーベックを問い詰める。
エーベックは答える。
その鼻には……毛が伸びたまま。
「仕方なかったんだ……。
娘を人質に……」
「クッ!」
ヒゲオヤジは目を逸らす。
鼻毛って見てると気になるもんなぁ。
ナユタが潤んだ目で俺を見つめる。
「ゴンザレス様、流石にございます」
何が?
鼻毛に気付く注意力?
だけど、ね?
俺は遠い目をして告げる。
「気付きたくは、なかったな……」
ヒゲオヤジは俺を見て、そして項垂れながら問い掛ける。
「……なんで分かったんだ?」
「見れば分かる。
もっとも、俺でないと見逃すかもしれないな」
白い毛だから注意力が試される。
「なるほど。
ナユタさん、改めて聞こう。
この方は?」
「私の忠誠を誓う方に御座います」
「名を明かして貰うわけには?」
「今は、まだ。
……ただ一つだけ。
このお方が率いれば、この革命は必ず成功します。
それだけのお力を持つお方です」
うん、それって誰よ?
ヒゲオヤジは半信半疑だ。
そりゃそうだ。
ナユタは少しだけ思案する。
そして俺に向き直り言った。
「ゴンザレス様。
なんとか西区のカーラさんを救い出す方法は無いでしょうか?」
「そりゃ、あるだろ?」
俺は知らんけど、方法ぐらいなんかあるんじゃね?
「やはり!」
「なんと!?」
ナユタとヒゲオヤジが驚きながら、声を上げ全員が驚愕の顔で俺を見る。
え!?
俺がアイデア出すの?
ジーっと期待の眼差しで見つめられる。
ポクポクぽくちーん!
あ、そうだ。
「簡単なことだ。
罠に掛ければ良いんだ。」
悩む必要もない。
いつも通りの詐欺で考えれば良いのだ。
俺は鼻毛おっさんを指差す。
このおっさんを使って。
「このおっさんは相手に的確な情報を渡した実績がある。
よって、こいつの言うことは相手にとって信用があることになる」
「つまり……、どういうことだ?」
ちょっとは考えなさい!
ヒゲオヤジ!!
赤い帽子被らすぞ!
「つまり、情報操作をして相手を好きなように誘導出来るということだ」
相手が沢山いたとしても無尽蔵にいる訳ではない。
こちらの思う場所に誘導して、その隙に救出すれば良いのだ。
「問題はそのただ1人を救うのに、それだけの価値があるかどうかだ」
でも俺が捕まったら全力で救ってね?
「カーラに救う価値がねぇってのか!」
フーが興奮して叫ぶ。
やぁねぇ?
興奮しちゃってぇ〜。
わたくしのようにクールに生きなさいよ。
「カーラさんを救うことで果たして私たちは有利になれるのか?
ゴンザレス様はそうおっしゃっているのです。
助けたは良いが、そのまま革命軍が今のまま追い込められては全ては水の泡」
ナユタの言葉にフーはトーンダウン。
「しかしよう……」
全員が考え込む。
俺は適当な椅子に座る。
ところで今更だけど君たち暗くないの?
この部屋蝋燭一本だよ?
蝋燭もっと火を付けようよ、怪しさMAXだけど。
そんな中で俺、よく鼻毛に気付いたな?
白い鼻毛が僅かな蝋燭の灯りを反射させてたからだな。
「ゴン……、なんとかなんねぇのか?」
ブーが俺に頼る。
だから君たちもう少し頭を働かせなさいよ?
「そもそも見捨てるなんて言ってないぞ?
優先順位をはっきりしておかないと全てがダメになる。
それを整理してからだ」
第一、革命軍だかなんだか知らんが、こういう集まりは1人を見捨て出すと簡単に崩壊する。
逆に見捨てずに効果が出れば一気に勢い付く。
そういうもんだ。
情報を聞き、優先順位ごとに並べ、もっとも効果的に罠に掛ける。
仕掛ける時は一気に。
何故かいつの間にか俺が話して皆が質問。
俺が答える、皆がこういう時はどうしたら?
俺がこの時はこのように、と。
俺……前にも同じようなことやったことある。
カストロ公爵領とかゲシュタルトとか、後、何気にゲフタルも!
ねえ、君たちは俺のこと疑ってないの?
急に出て来て怪しくないの?
俺ってこう言っちゃあなんだけど、チンケな詐欺師オーラビンビンだと思うよ!?
もっと人を疑えよ!!!
ブーフーウー?
あんたら、俺と一緒に、密売品売りに行くのどうした?
なんで革命軍の一員ぽくなってんの?
ナユタは……、何故か最初から慕ってるね?
なんで?
里を潰したら、感謝されました。
どういうこと?
きっと俺から溢れ出す司令官オーラが……出てる訳ねーだろ!!
チンケな詐欺師オーラしかないはずなのに何が起きた!?
最後にヒゲオヤジが皆と頷き合い俺に言う。
「では、この計画の通り進めます!
ゴンザレス様!
皆、貴方様について参ります!!」
美女以外ついてくんな!!
どうして、こうなったぁぁぁあああ!!!
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