第17話疑惑のゴンザレス①
世界最強と呼ばれる存在がいる。
曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。
曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。
曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者
曰く、最強にして無敗、世界の叡智の塔に刻まれるランクNo.1も超えた最強ランクNo.0
だが、その正体は一切不明。
男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵家の捨て子だとか転生者とか生まれながらの救世主だとか、数え上げたらキリがない。
それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。
それが、世界最強ランクNo.0
おっす、俺はア、なんだっけ?
アクスだったけかな?
ゴンザレスの名は忘れないんだがなぁ。
絶賛、世界ランクNo.9帝国の秘宝ソーニャ・タイロンにじろじろ見られています。
帝国の中心部、帝都にて世界の叡智の塔観光をして、昼間っから酒場でゆっくり酒を飲んで看板娘のメメちゃんにちょっかい出してたら、いつの間にか目の前に座られた。
とりあえず、俺もガン見しておいた。
顔も身体も良〜い女なんだよなぁ。
目の保養〜。
足を組見ながら、こっちを見てくるんだが、これがまた色っぺえのなんのって。
一晩お相手してぇ。
「ねえ、あんた。No.0なんでしょ?」
はん? 突然、何言い出すんだ? この姉ちゃん。
「違うけど?
ていうか、No.0なんて居ないんじゃねーの?」
色々旅してっけど、噂は聞けど見たヤツ居ねーだろ?
とりあえず、エールの追加。
この姉ちゃんの色っぺえ足を見ながら、もう一杯だ。
「私の目の前にいるわよ」
は? まだ言うか。
詐欺にかける訳でもないのに、いちいちNo.0とか騙る訳がない。
第1、この女は国の役人だし、公爵令嬢だ。詐欺るには危なすぎる。
俺は危険な橋は渡らない主義なのだ。
ふー、とわざとらしくため息を吐く。
「酔ってんのか?早く帰って寝ろ。
夜の相手をしてくれるんなら、大歓迎だがな」
このお嬢さんは、ナンバーズだが、あの女のように突然斬りかかったりしない。だから、夜の相手もバッチこいだ。
「金貨100払うわ。雇われない?」
は? 俺が金でそんなヤバそうな話でも乗るとでも?
「よろしくお願いしやっす!」
雇い主のお嬢様に、その場で深く頭を下げる。
金がねぇんだ。
具体的には、今頼んだエール分すらない。
「誘っておいてなんだけど、早いわね。
しかも内容聞かなくていいの?」
是非教えていただきたい、雇い主様。
「任務よ。私と一緒にエストリア国に行って内偵調査をするの」
「はい?」
何度目かの疑問だが、流石に今度は口に出して、聞き返してしまった。
「だから、私と一緒にエストリア国に……」
「愛の逃避行か?」
ふっ、モテる男は辛いな。
お嬢さんお金いくら持ってる?
誘拐事件で狙われちゃうから、ちゃんと直筆の置き手紙しておいてくれよ?
「なんでよ! 内偵調査って言ってるじゃない!」
だんだん声が大きくなっておられますぞ?
たまたま人が少なくて良かったな。
「お嬢さんのお供はどうした?」
あのお嬢さんの命令なんでも聞きそうな部下たちは。
「……全滅させられたわ。あの時に」
沈鬱そうな表情。
あ、これただの厄介ごとだった。
子守付きの。
「じゃ!」
と素早く立ち上がるが、流石にNo.9ガシッと手を掴まれ一切振りほどけない。
「は、離せ……」
厄介ごと過ぎて金貨100枚でも割に合わん!
「逃げるなら、私の権限で無銭飲食で即時逮捕するわよ!」
ぐぐっ!
ここでサラッと金を出して、立ち去ればいいんだが、肝心の金がない。
エールを持ってきたメメちゃんが、ジト目で見ている。
万事休す!
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