第38話奴隷ゴンザレス⑧
その日は奇跡のような、ううん、奇跡の日だった。
ユーロ王国を失い頼れる数名の騎士と共に逃げに逃げ続け、私ユーロ王国最期の姫ルカ・ユーロはついに帝国に捕まった。
ただ逃げ続けた意味は多少なりともあったのか、逃げ続ける内に情勢が変わった。
魔王が現れ帝国が覇道をやめた影響で、処刑されることなく恩赦として犯罪奴隷として鉱山での労働を命じられた。
だけど終身の犯罪奴隷となった私と騎士たちには希望はなかった。
鉱山から抜け出すには出入口は一つしかなく、脱出を手引きしてくれる仲間も全て捕まり、国を再興するどころかいつか奴隷として力尽きる日を待つだけだった。
いっそそれならまだマシかもしれない。
私は性別を偽り、騎士たちに護られてはいたがそれもいつまでもつか。
女性とバレた瞬間に、奴隷もしくは看守たちの慰みモノになるのは間違いなかった。
そうでなくても、男と思われたままでも騎士たちが護るのをやめた瞬間に、誰なりとの餌食になってしまう程度には私の容姿はよかった。
その日が近いことに目を逸らし震えながら日々を過ごす。
そんな時、あの人が奴隷としてやって来た。
あの人、ジャックという名の彼は
あっという間に看守と他の奴隷たちに取り入り、情報を集めて始めたようだ。
エイブラハムからも何を考えている奴か分からないので、近寄らないようにと忠告された。
ただ彼は他のどの奴隷とも違って、私に一切興味を示さなかった。
まるで美少年であっても男に興味が無いからとでもいうように。
ただこの頃になると、私を男として見るのは多少無理が出ていた。
情報を集めていたはずの彼が気づかない筈がない。
気付かないとしたら余程の間抜けか、徹底的にその可能性を考えていないか。
もしくは、私が女と気付いていて本当は男にしか興味が無いか。
目は自然と彼を追い始め私は擬似的な恋をした。
それはこの辛い現実を直視したくない心の所為だ。
そもそもここに送られた時点でマトモな人ではない。犯罪者なのだから。
それでも私は生きる希望を欲しがった。
それだけのこと。
運命の歯車が回り出すのは突然だった。
大量の魔獣が鉱山にやって来たのだ。
帝国から逃げ惑っている間にも、いくつもの街や村、時には国が滅ばされたのは知っている。
世界ランクのナンバーズですらもその半数近くが魔獣にやられたと。
そんな魔獣たちが数百以上。
騎士たちが精強とは言えそれは気力体力が万全の状態の時のこと。
今の弱った騎士たちでは、如何程粘れるかが精々だ。
その時、立ち上がったのが彼だった。
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