第111話帝国とゴンザレス⑦

「なんでだー。何故だー」

「あんた、また面白いことになってるわねぇ〜」


 俺が昨日よりも豪華な服をメイドに着せられている間、エルフ女は優雅にソファーに寝転びフルーツをかじっている。


「おい! こら! エルフ女!

 立場変われ!」

「むーりー。大体、これはカストロ公爵に対する祝典でしょ?

 アタシ関係ないもの。

 カストロ公爵なのは認めたんだから諦めなさいよー」


 認めてない! 断じて認めてないぞ!

 あんなのは気の迷いだ!!


「ご主人様、ご用意出来ましたか?」


 ドレス姿のメメ……、とーっても高貴な雰囲気たっぷりだからメリッサ様と呼ぶべきか?


「はは〜、メリッサ様。本日もお美しい!」

 心底そう思う。


 メリッサ様はとーっても複雑そうな顔をする。


「お褒め頂くのは嬉しいのですが。

 メメです、ご主人様。

 今更です」


 今更……、今更なのか……?


 どう見ても上級貴族のメリッサ様に散々、ご主人様呼ばわりされた俺って一体誰だ!


「それはともかくとして陛下をお待たせしてはいけません。

 行きますよ、ご主人様」


 ずるずると連れて行かれる俺。


 おい! エルフ女! ハンカチ振るな!!






 是が非でも逃げるんだった……。

 絶対、逃してくれない気配タップリだったけど。


 お! ツバメにソーニャちゃんにチェイミーも。

 チェイミーはちょっとだけ笑顔を見せてくれてすぐ真面目な顔に戻る。

 か、可愛ぇえのぉう〜。


 居並ぶ大臣及び文武諸官、貴族たちも居るね!

 そこに豪華な服を着た詐欺師が登場!


 はっはっは!

 ちっくしょーーーーー!!!


 何で何でこうなった!?

 騙された! 騙されたんや〜。


 詐欺には気をつけて!


 後ろからは付き従うように高貴バージョンメメが付いてくる。

 その前を行く俺って何?


 そうすると周りがざわざわし始める。

「何故、メリッサ皇女が!?」

「噂は本当だったのか!」

「では、奴が」


 真ん中まで来ると見えないように後ろからメメが服を引っ張る。

 ここでストップらしい。


 しばらく待つと、皇帝陛下と年増の美女と初老の神経質そうなハゲた爺さん。


 帝国皇女様は高貴っぽい男女沢山と一緒に横に並んでる。

 あれ全員子供か?

 皇帝陛下すげ〜。


 居並ぶ人々が一斉に頭を下げる。

 慌てて俺も頭を下げようとして後ろから。

(ご主人様は声をかけられるまで、そのままで)


 メメがフォローしてくれるらしい。

 だから一緒に歩いてくれたのね?

 でもそもそも、俺、何でここに来させられたの?

 説明プリ〜ズ。


「皆の者、面をあげよ」

 全員が顔を上げる。


「カストロ公爵アレス殿」

(返事)

 メメちゃんが後ろから俺に指示を出す。

 わたくし、メメちゃんの腹話術人形ですのよ。

「はい」


「まずは礼を言おう。帝国火急の折、帝国皇女と帝国そのものを救って頂き感謝する」

 皇帝陛下が頭を少しだけ下げる。


 おー……! 周りが騒つく。


 ちょっとおおお!!

 なんで皇帝陛下が俺に礼を言うの!?

 誤解! 誤解だから!!

(メメ! 誤解が!)

(しっ! 黙ってて下さい)


 でも誤解がー、誤解なんだー!!

 誤解が天元突破やぁ〜!


「帝国としては貴殿が必要と思う事があれば、何なりと力を貸すことを誓おう」


 おおお〜!!

 先程よりずっと大きなざわめき。


 ただの詐欺師に何を約束してんの!?

 あり得ない! 

 あり得ないよー!!!


「時に貴殿は魔王討伐に於いても、多大なる功績を挙げたとか」

「それについては、わたくしからご説明させて頂きます」

 高貴メメが進み出る。


(た、頼んだメメ!)


 俺、魔王討伐なんて何もしてないから!

 ちゃんと説明してくれ!


 コクンと頷くメメ。

 すっと皇帝陛下を見てメメは口を開く。


「多大なる貢献など、とんでもない」

(おお!! メメちゃん!)


 メメちゃんから出た否定の言葉に俺は感動。

 信じてたぞ! メメちゃん!

 メメはさらに告げる。


「魔王を討伐出来たのもアレス様のお力によるもの。

 アレス様が居なければナンバーズも含み、我々は全滅していた事でしょう!」


 メメーーーーーーーーーー!!!!!

 あんた、なんばいいよっとぉおおお!!


「なんと!? それは真か!」

 皇帝陛下がわざとらしく驚く。


 皇帝陛下、あんた絶対事情聞いてるよね?


「はい。

 アレス様は1人また1人と脱落していく中、剣聖の担い手と最後に魔王の下に辿り着き、更には剣聖の担い手も諦めようとしていたその時、ただ1人諦める事なく魔王を討伐致しました。

 それもただの一撃でもって」


 1人1人足止めで残っただけやないかーい!

 諦めようとしたって、倒すことを諦めようとした訳じゃなかったけど?

 話聞いたんだよね?


「バカな!! それほどの?」

 皇帝陛下が椅子から立ち上がり実にわざとらしく驚く。

 


 周りもそんな!!

 バカな!

 これがNo.0!

 そんな感じに驚きのご様子。


 あれ、おかしいな。

 俺はいつから転生してヒャッフーして根拠なくイケてるムーブされるようになったんだ?

 それって詐欺とかカルト宗教の手法だよね?


 そこで並んでいたドリームチームのメンバーが進み出る。

 代表で帝国皇女様が口を開く。


「事実です。私たちは最初に脱落しもうダメだと思ったところを救われました」


 皇女様まで救うとは、とか。

 ナンバーズを救って見せるほどの力か、とか。


 文武百官及び貴族どもは賑やかしのモブでござんすかぁ〜!?


 あああああああああ!!!!

 もうどうしてこうなった!?


 あんたら、マーカー付けた後に一緒に魔王城から逃げただけやないか!!


 それを救ったと言うんか!

 言うんかー!?


 皇帝陛下は、俺を真顔で見て尋ねた。

「アレス殿。魔王を一撃とは真か?」


(嘘だけは不敬罪になりますからダメですよ?)


 メメ〜……、後でベッドで反省させる。

 ……何故だろう、喜ばれそうな気がしてゴンザレス怖いの。


 一撃か一撃じゃないかって?


「……真です」

 一撃だよ!


 聖剣ぶっ放してどかーんだよ!!!


 皆の者!!

 話に嘘が一つも無いけれど騙されてるぞーーーーー!!!!!!


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