新しい猫

 近所のおばさんが、猫を飼い始めた。


「も~、ほんとに手がかからない良い子で~!」

 おばさんがうちのお母さんと猫の話で盛り上がっている。うちも猫を飼っているからなのか、猫を連れて遊びに来たのだ。

 当の猫本人といえば、部屋のすみで静かに座っている。うちの飼い猫のアンコは、ちらりと見ただけで興味を失って寝床に戻っていった。

「拾った子だけど、トイレもすぐに覚えたし爪はちゃんと爪研ぎでやるし! ああでも餌だけは高いやつしか食べないの。カリカリは嫌いらしくて~」

 ふうん、と思っておばさんが連れてきた灰色の猫を見る。

「カリカリはいや?」

 猫を撫でて、なんとなく聞いてみた。

『私はね、本当は人間なんだよ』

 突然、そんな声が聞こえてきた。その場にいないはずの、男の人の声。

 それと同時におばさんの猫がプイと横を向き、何もかも諦めたような遠い目で、窓の外をじっと見ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る