宇宙からの神様
その神様は宇宙からやってきた。
ある日突然空よりも高い宙からやってきて、この地に住み着いた。
『治るまでここで世話になる』
神様はそう言った。真夜中に光る方舟に乗ってきた、それはそれは美しい神様に村のみんなは頭を垂れた。体が青白く発光していて目鼻はない。声は鈴が鳴るような心地よさがある。不思議と恐ろしくはなかった。村外れに乗ってきた方舟を置いて、神様はそこで暮らし始めた。
『なぜここはみんな痩せているのか』
「ここは土地が痩せていてろくな作物がとれないのです」
『ではこれを試してみよう。良い肥料がある』
何かを土に埋めると、しばらくすると作物がたくさんとれるようになった。
『ここは水害が多いな』
「大雨が降るとあの川がよく氾濫します」
神様はしばらく川を調べたあと、村人に指示を出しました。神様の指示通りに河川の工事をすると、氾濫は滅多に起こらなくなりました。
「神様は素晴らしいお方です」
『カミサマとやらはよく知らないが、役に立ててるならいい。土地を貸してもらったり食べ物をもらっている代金だ』
「お陰さまで餓えることがなくなりました。ずっとここにいてください」
『そうかそうか。私は故郷を追われた身。いい土地を探していたが、ここを第二の故郷としよう』
ずっとずっと宇宙からきた神様はそこにいた。神様は村のみんなのことが大好きで、村のみんなは神様のことが大好きだった。
痩せた土地を神様の肥料で豊かにして、餓えることのない穏やかな生活をずっとずっと続けた。
春。ちらりちらりと桜が舞う。
青白く光る、桜が舞う。
『さあ今日は何で遊びましょうか』
『かくれんぼをしようか』
遊ぶ子供の目鼻はない。体は青白く光っている。
もうこの村には何百年と死人がでていない。肥料は村の全面に撒かれた。村人はもう何百年も、神様の故郷で作られた肥料で育ったものしか食べていない。村人はそれらのことに一切の疑問を持たない。
だって疑問を持たないように、少しいじったから。
『……………』
危機感を覚えたこの惑星のこの土地の本物の『神様』によりここは閉ざされた村となってしまったが、宙からきた神様にとっては特に問題があるようなことではなかった。
青と白をベースとした美しい世界。美しい住人。
今は亡き故郷を思いだし、フフ、と小さく笑った。
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