確認
「どんな結果になっても文句言うなよ! 絶対言うなよ! これフリじゃなくてマジだからな!」
珍しく私の言うことを全力拒否してきた不動くんだったが「どのようなことになっても文句は言いません」という念書をかわすことで"お願い"を聞いてもらった。
「じゃあ……計るよ。脱いで」
そうして、不動くんの部屋にわざわざ持ち込んだメジャーを構える。
「おう……」
上半身の服を脱ぐと、健康的な筋肉が露にぬる。長身だし、本人が鍛えていると言っているだけに迫力のある体だ。
「…………………………………………」
計った。胸囲を。
「…………………………………………………………………………………はあ」
重たいため息とともに、ベッドに転がる。百センチ越えてるってなんなの。
敗北だ。完全なる敗北。
「だーからやめとけって言ったのに」
服を着ながら呆れたように言われた。
「……………むぅ………………………」
「こら、女の子がそう簡単に男のベッドで寝るな」
「………………………うぅ……………………」
*****
自室。夜なので家に帰ったのだ。
「女なのに男の子に胸囲で負けるとかおかしくない……?」
ぶつぶつと言いながら鏡を見つつ、胸に詰め物をする。
「こんなかんじ……?」
メジャーで計るとだいたい同じくらいの胸囲になった。詰め物の形を整えて、上からTシャツを着てそれっぽくしてみた。
「巨乳になった……」
何を食べたらあんなに育つんだろう。いや筋トレのせいだろうが、それでも育ちすぎだ。
「こう、かな……」
鏡の前で、グラドルっぽいポーズをとってみる。
『ぷぷっ』
『ふふっ、笑ったらかわいそうだよ、ふふっ』
『やめてあげなよー。くくくっ』
声が聞こえた。それは父のものでもなく母のものでもなく、妙に甲高い、嘲笑う声。
聞こえた方向、ベッドの下を覗いてみる。そこには小さな小さな茶器とお菓子があった。ほかほか湯気がたっていて、たった今まで誰かがいて、迫りくる人間に危機を感じて逃げ出したかのような。
野良妖精だ。野良妖精の不法侵入お茶会だ。わりとよくあることでもある。
だから窓から茶器その他をぶん投げた。
『あー!!!!!』
隠れてた妖精がひょっこり顔を出して叫ぶが「……何?」と睨むと、
『退散退散!』
『このニンゲン、我々が見えている!』
『急いで逃げろ! 急いで逃げろ! 外に投げ飛ばされる前に!』
と、あっという間に逃げ出していった。一人きりになり、部屋は本当に静かになる。
「……………はあ………………」
今日はもう寝よう。何も考えたくない、と、私は詰め物をとって眠りについた。
……胸が大きくなる夢を見た。朝起きて、自分の胸のサイズを確認して、朝から最悪な気分になった。
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