ピンク色の髪

 私の髪は栗色だ。でも、たまには他の色に変えたくなるときがある。


(……ピンク……)

 いくら昔から外見に関してはかわいいかわいいお人形さんみたいだの言われてはいても、さすがにチャレンジャーな色だとは思う。まだ高校生だし。

 でも私には秘策があるのだ。だって私には、霊感があるから。

「妖精さん妖精さん」

『はーい。あら、ニンゲンのお客さんは珍しいわ!』


「おはよーッス三島ぁ」

「おはよう」

 不動くんは、いつも通り。ピンク色の私の髪の色に、言及一つすることはしない。

 それもそうだ。だって妖精さんに染めてもらったから。染める材料もなにもかも"あちら"のものだから、この桃色は私にしか視えない。不動くんにはいつも通りの栗色の髪にしか見えないはずだ。

(……ちょっとかわいすぎたかな)

 妖精さんの腕は完璧で、理想通りの色となった。とはいえ、髪が桃色になった自分を鏡で見ると、この常に無表情の私には甘すぎる色だったかな、と思う心もある。他の人に視えないから気にすることはないのだが、そこを気にしてしまうのが乙女心だ。……私にだって、乙女心くらいある。

「ねえ不動くん」

「うん?」

「私のこと、かわいいと思う?」

「おう!!!」

「髪染めてもかわいいと思う?」

「何? 染めんの? まあお前なら絶対かわいいからな!」

 疑うことが一切ない笑顔だ。多分金とか黒とかありがちな色に染めると思っているんだろう。

「……例えば、ピンクでも?」

「え、絶対かわいいじゃん~!」

 親指をぐっとしている。

「じゃあさ~、あれ着てよ。甘ロリだっけ? ピンクとか白のゴスロリ。ぜってー似合うからさ~」

「……いや、リアルで染めたりしないから」

「えー、残念」

 俺もずっと黒だけどさー、無理だろうけどやるなら銀髪になりたいわ。かっけーじゃん?と雑談が続く。

 そうか、かわいいか。

(じゃあ……いいか)

 そう思ったとき、自分だけの桃色の髪を、風がゆるりと静かに撫でた。

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