好きなんです
「好きです。付き合ってください」
よく知らない男の人に告白された。別の高校の人で、帰り道を歩く私を見て一目惚れしたらしい。
告白は断ったが、それからつきまとってくるようになった。決して近づいてはこないが一定の距離をとって同じ道を通ったり、いつの間にか家を特定されてラブレターを入れられたり。
俗に言う、ストーカーになってしまった。
「ふっ……さてどうしてくれようか」
笑う不動くん。今はいっしょにいる時間が多いのでうやむやになったが不動くんだって元は私につきまとっていたのだ。同類である。
「殴ってもいいけどさあ、面白味がねえな」
「解決するなら面白味とかどうでもいいんだけど……」
「よしいいことを思い付いた。三日ぐらい時間チョーダイ」
そうして不動くんはそれから三日間、放課後になるとさっさと家に帰っていた。何をしているのかは私にも知らされていない。そして四日目に、晴れ晴れとした顔で書類を突きつけてきた。
「もう二度とつきまといませんって念書書かせたぞ」
「すごいね。どうやったの?」
「これ見せた」
ドサドサドサ、と鞄から出したのは大量の写真。それはあの告白してきた人が私の様子を伺いながらあとを追っているのを更に後ろから撮影したり、休日に遊んでいるところの写真だったり、SNSのスクショだったり、愚痴しか書いてない別の鍵つきアカウントのスクショだったり。
「ストーカーはストーキングされるの嫌がるからさあ」
「……………」
「自分がつきまとう側だから自分の個人情報保護には脇が甘いんだよな」
「……………」
「まあこれ見せたらビビってあとは話し合いよ。暴力とかしてないからな?」
「……………」
「あ、俺は三島の隠し撮りとかはやってねえぞ! 俺の主義じゃないから」
「……………」
「な? 役に立ったろ? 役に立ったよな? 最高に有能だろ?」
ふふふ、と笑って。
「だから、もちろん俺のこと好きになってくれるよな?」
もう高三なのに変わんないなあ、と小さく心のなかで呟いた。
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