お宝
昔昔、はるか昔。まだまだ幕府があった時代の頃。
百年くらい前の、戦で滅んだ武将の一族が、万が一のときのためにどこかに隠していた埋蔵金がとある場所にあるという噂があった。一攫千金を狙った人々が、ワクワクしながらそこへ向かう。そこは巨大な大蛇が住まうといううわさがある山だ。
「なんでも大蛇の噂は人を近づけたくない武将が流した作り話だそうだ」
「なるほど納得」
土を掘り返すための道具を持って、10人くらいでその山の洞窟へと入っていく。
そして、本当にいた人よりもはるかに巨大な大蛇の舌に絡み取られてあっさりと死んでしまった。
『眉唾に踊らされるまぬけな人間どもよ』
大蛇は舌を器用に動かして笑う。舌の細い細い部分で人の体を漁り、金目の物を持っていく。
『そんなものを集めてどうするのかね』
小鳥が尋ねてきた。大蛇の頭にちょんと乗って羽を休めている。
『たまに当たりがあるのよ。当たったときが楽しいんだ』
『当たり?』
『ああ、高価なお金、装飾品、ともかくキラキラしたものだ。あれはいい。海よりも美しく月よりも輝いている。見ているだけで時を忘れる』
『ふぅん。やりすぎて退治されるなよ』
『ああ、もちろんだ』
ひっそり、こっそり、きれいなもの・輝いているものを集め、殺した人間は崖から落として滑落死体に見せかけた。この山は傾斜が激しくて、たまに落ちて死ぬやつがいるのは知られている。
結局大蛇は退治されることなく、何十年も時を重ねた。
『大蛇よ』
小鳥がまた尋ねてきた。もっとも、前とは別の小鳥だろう。あっさり成長してあっさり死ぬ。今は何代目だろうか。
『なにやら元気がないな』
『ああ、私も年だしな……そろそろあの世に行くだろう』
『ほう、大事なキラキラしたお宝はどうするんだ?』
『抱えて死ぬさ。誰にも渡すものか』
その言葉通り、その年の冬が来る前に、大蛇は寿命で静かに息を引き取った。そのとぐろの中心には大事な大事なお宝がある。
秋が終わり落ち葉が積もり、雪が積もり、草花がまた芽吹いていくうちに、大蛇の巨大な体はすっかり植物と土に隠れてしまった。そして長い長い年月をかけて、大蛇の体はすっかり山の一部となった。
その中心に、お宝を抱えたままで。
現代に伝わる噂がある。その山中には、お宝が埋まっているという。
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