立ち入り禁止
ここに入ってはいけない。
私の地元に、そう言われている場所がある。とある森の中にある、注連縄が張られている場所だ。“そこ“をぐるりと囲むように張られていて、もし入るなら注連縄を乗り越えていかなければならない。
「うわ、不気味」
「なんか静かすぎない?」
友達数人と、そこを訪れた。行く前は注連縄を越えて何があるか確認しようと意気込んでいたのに、実物を目にするとそんな気はなくなった。
いやに静かで、重い。そんな空気が満ちる場所。虫の声豊かな夏だというのに、ここだけは蝉の声一つしない。
「…………」
全員が押し黙っていたときに、強い風が吹いた。みんなの髪が、スカートが、翻る。
「きゃっ」
「うわっ」
思わず声を上げるがそれは一瞬。すぐに収まり、「びっくりした」と声をあげた。
違和感。なんだろう、急に頭が軽くなったような。
「ちょっと! あんたそれ……」
「え?」
「髪!」
言われて気付いた。私の背中までのロングだった髪が、なぜか短くなっている。
振り返ると、大量の髪の毛が注連縄の向こうに落ちていた。風で注連縄を越えた髪が、キレイに切り落とされていたのだ。刃物なんて、どこにもないのに。
「ひっ……………!」
そのあとは、脱兎のごとく家まで帰った。
それ以降、その場所には近づいていない。
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