お盆(カルト宗教)

 家の近くに、全国的に有名なカルト宗教の信者をしている一家が住んでいる。

 一方的に布教されて耳に入れられた情報をまとめると、信じないと地獄に落ちるらしい。信者はみんなその宗教の神様が助けて天国へ連れていってくれるという。

 強引な布教を続けているうちに、すっかり近所からの嫌われものになってしまったが、むしろ「今にバチが当たるぞ」と言ってくるほどに自信満々だ。

 数年前にそこの奥さんが心不全で亡くなったときは、どこからかやってきた他の信者の人ともに「たいそう信心深かったから○○様のところへといける」と言っていた。

 お父さんもお母さんもはいはいと流していたが、私には視えていた。

 たしかに、大きな手が奥さんを迎えに来てたのだ。幽霊となった奥さんは大喜びでそれに乗っていずこかへと消えた。

 奥さんは、それっきりだ。

 お盆になっても帰ってこない。あの奥さんだけではなく、あの宗教の人はみんなそうだ。亡くなると大きな手が迎えにきて、それ以来お盆だろうが家族の危機だろうが、絶対に姿を現さない。

 天国とやらがそんなに気持ちいいのか、それとも……。


 今年もその家の前では、誰も帰ってこなかった故に誰も送ることができない、無駄になっている送り火が、静かに静かに燃えていた。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る