ニワトリ小屋の噂

 学校には、怖い噂がある。


「夕方になる頃にニワトリ小屋のところに行くと、お化けがニワトリをむしゃむしゃ食べてるんだって」

「じゃあ見に行こうぜ!」

「ええ……」

 小学一年生の三人は、そうして夕方の学校に居残ることにした。夕方までこっそり持ち込んだゲーム機で時間を潰して、ニワトリ小屋が見える空き教室で見張っていた。

 放課後、そろそろ人もいなくなってきた。

「こら!」

「わあ!」

 振り返ると、メガネをかけたスーツを着た若い大人の男が立っている。

「君たちは……一年生? 二年生? ここは四年生の教室だよ」

 しまった、四年生の先生だろう。三人は怒られる前に白旗を上げたほうがいいと判断した。

「あそこのニワトリ小屋におばけが出るって聞いたから見に来たんです」

「ああ……」

 先生がため息をついた。

「それはね、嘘なんだよ。ずっと昔、この学校が建つ前に、あそこは井戸があって危なかったんだ。井戸は分かるかな? 深い穴の底に水が溜まってて、間違えて落ちちゃうと死んじゃうんだ。それで事故が起きて、子供が近寄らないようにって誰かが嘘のお化けの噂を流したらしいけど……まあ、君たちみたいに怖い話が好きな子は来ちゃうよね、逆に。もう井戸は埋められてしまって、噂だけが残ったんだ」

 先生は苦笑いをしている。

「なあんだ、じゃあなんもないのか」

「そうだよ。ほら、もう真っ暗だし早く帰らないと心配されるよ」

 先生に促され、三人共大人しく家路についた。


 翌朝のことだ。鶏が無惨な死体になっていた。

 何か知っていることがあるなら教えてほしいと全校集会で校長先生が言っていたので、三人は五時までは鶏が生きているのを見たことを伝えに職員室に行った。

 全て伝えると、担任の先生も周りにいた先生も、みんな困惑した。

「この学校の先生に、メガネをかけた若い男の人なんていないわよ?」

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