カス(おもちゃ)
神様は物を作ることが大好きです。
いろんなおもちゃを作ってきました。とてもよく動くおもちゃがたくさんできました。失敗作のおもちゃもたくさんできました。
昔昔、そういった失敗作のおもちゃをまとめて箱に入れていたら、うっかり地上にぶちまけてしまいました。そのあとはそういったことがないように、重くて簡単にひっくり返らないような箱に入れているのでもう大丈夫です。
神様は今日もおもちゃを作っています。順調にできていて、今はやすりで形を整えているところです。
慎重にやすりをかけて、なんとか想定通りの形になりました。一息ついて、ようやく神様は気づきます。おもちゃを作っているときにできた破片ややすりをかけていたときの粉が、服についてしまっています。神様は服を脱いでバサバサと扇ぎ、それを払いました。これでもうきれいです。
そしてそれらの破片たちは、雲をすり抜けて地上に落ちていきました。
*****
「おい、なんだあれ……」
「ん?」
職場からの帰り道、周りの人間が騒いでいるからそちらを見ていると、なんともあまりにも大きすぎるひまわりが咲いていた。冬に咲き誇る、5メートルはありそうなそれは明らかに異常な存在だ。
「なんだこれ撮影? 芸術?」
みんながざわざわしてスマホのカメラを向けて写真を撮っている。
みしっ
顔の中心に、違和感があるような。
*****
『あーあーあーあー』
またまたやらかしちゃったのね! とドキドキさんと自称するおもちゃはそこにやってきた。
冬に咲く巨大すぎるひまわり。そしてその周囲の人間は、頭がひまわりになっている。その場に崩れ落ちて、ぴくりとも動かない。
『もいじゃえー』
"ドキドキさん"がひまわりに近づくと、あっという間に頭がひまわりになる。
『ドキドキさんのアイデンティティーが!』
がびーん! と口で擬音を出すと、懐から出したナイフを数閃。するとあっという間にひまわりは黒くて四角いキューブの塊になった。そして頭も、ひまわりからいつもの心臓頭に戻る。
『やったね! これでいっぱいたくさんいろんなものを作れるよ!!!!!』
「黙れ」
背後から首筋にぴたりと刀が当てられた。見なくても分かる。神様に忠実な、"成功例"の人型の白いおもちゃだ。
「今日こそ回収するぞ。お前の行為はお前が作られた目的から逸脱している」
『こんばんわ優等生くん!!! 管理ができない"神様"が悪いと思うな!!!!! ほら今日だってこれ絶対新しいおもちゃができたときのゴミがこっちに落ちてきて』
「おしゃべりは許可していないぞ不良品」
『偉そう!!! 嫌い!!!!!』
「本当にうるさい不良品だな。だいたい……」
『いらっしゃいませ!!!!!!!!!』
突如、二人のものではない声がする。そたまらを見ると、今まで空き地だったところに、店が建てられていた。
店名は、ロシアンバラムツ料理店。
「…………………」
『いえわかります! 拙者は故郷からこっちに出てきて修行中の身! 故郷で立派にあのお方の元でお仕事をなさっている白き方の前に出てきちゃいけないことは!
でもあまりにも! あまりにも最高作ができてしまいまして!!!!!!
こちらのバラムツ料理を! バラムツムースケーキを!!! どうか! どうか味見していただけませんか!?』
『やだー』
『こちらのバラムツムースケーキ、彩りは豊かに! 香りは上品に! 味は深い甘味を備えた一級品でございます!』
拒否の言葉を聞いても意に介さず、どこからかテーブルを出現させて、ケーキの皿を置いていく。
『甘味が苦手な方もご安心ください! 甘さ控えめのバラムツクッキーもご用意しております!!!』
「さすが不良品だな。俺の想定の範囲を軽々と越えてくれる」
『白きお方から想定以上とおっしゃっていただけるとは!!!! お褒めいただきありがとうございます!!! お祝いにこちらのバラムツ赤飯はいかがですか!?』
「…………………………」
『通じてない嫌味ってカッコ悪いよねプークスクス』
「もうしゃべるな。お前ら二人とも破壊する」
刀を構え、切っ先を二人に向ける。
『さっき回収って言ってたじゃん??????』
『ああ! 赤飯はお好きではないのですか!? これはこれは失礼しましたではこちらの五穀バラムツ米はいかがですか!!!!!!!!
どうでしょうお二方! そろそろご賞味してただけませんか!?!!?!?!!?』
「黙れ。……そっちの心臓頭もな」
『それはこっちの台詞だよ優等生くん』
『ああ! 初志貫徹! 初志貫徹!!!!! 右手はバラムツムースケーキ! 左手もバラムツムースケーキ!!! 多少力づくでもお二方に味わっていただきたいと拙者考えておりますので!!!!! 白き方と同朋の"おもちゃ"の方に食べていただけるとは拙者感激の極み!!!!!!!』
『ごめん君は本当に黙って』
シリアスやりたいんだよぉ、と言っているドキドキさんを無視して、白い神の使いは刀を強く握る。"ドキドキさん"は懐からなんかいいものを探して、ロシアンバラムツ料理店店主はバラムツ料理を二人の口に突っ込もうとした。
神様の"おもちゃ"たちの、日常の一コマである。
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