ドキドキさんの販売物一覧

「そんな理由でいわく付きの場所に通うなんて、お化けと関わり合いになっても知らないんだから」


 前回、三島からそんな忠告を受けたわけだが。

「マジかよ」

 スマホの画面に表示された見覚えのないアイコンと、通知の文章は、実に忌まわしい。

『【dokidoki-san.com】職業体験シリーズ新商品「悪の科学者ごっこ改」入荷!100%オフ!!!急げ!!!!!』

「あれじゃん……」

 dokidoki-san.com……あの将棋駒の販売元だ。絶対ホラーによくいる、ろくでもないオカルト物品販売してるタイプのやつだ。

「………………………」

 でも好奇心はあるから。ちょっと見てみたいなと思って見知らぬアイコンをタップする。

「Amazonのパクリか?」

 そんなイメージが湧いてくるのがdokidoki-san.comのレイアウトだ。いや使いやすいし検索もしやすいが。


『職業体験シリーズ第卍繧槐号!「悪の科学者ごっこ改」! きみも悪の科学者となって非人道的な実験をしてみよう! 法には触れない配慮もしてるよ!』

『お茶 大丈夫だよ』

『子パンダ(竹) かわいいペットを飼ってみよう! 食料は笹じゃなくて竹! 竹林に放てばもりもり食べてどんどん成長! 果たして竹林を荒野にすることができるかな? それは君の愛情次第だ!』

『負けず嫌いの将棋駒! 将棋での最適な打ち方を教えてくれるよ! この駒を使って将棋をしたら無双! 無敗! 最強! 君も竜王をめざしてみよう! ドラゴンキーング!!!!!』

『身長伸ばしキット 他人から5mmずつ身長を奪って君のものにしよう! 一ヶ月後にはみんなもうらやむ高身長に! ハイグレード版は周りのみんなの記憶や記録も改竄してくれるよ!』


「うさんくせぇ……」

 例の将棋駒も売ってある。売るなあんなもの。

 身長はこれ以上いらないしお茶はシンプルな説明が逆に怖いし竹林は近くにない。

 悪の科学者は。

「………………………………………………………………………」

 ちょっと。ちょっと気になるけど。

「いやだめだ、うん」

 多分すごいしっぺ返しがきそうだからやめておこう。俺はアプリをアンインストールした。


*****


「ありゃ、工事中か」

 犬の散歩をしていると、いつものルートが工事中で通れない。しょうがない、と別の道を選択する。せっかくだから、行ったことがない道を選ぶ。

 ノリで入り込んだそこは住宅だけではなく、公園や樹木も豊かなエリアだった。

 特に、竹林が。

「………………………………」

 昨日見たアレを思い出したが、すぐに頭を降る。それより散歩のほうが大事だ。

「ワンワン!」

 急に飼い犬のリュースケが竹林に向かって吠え始め、何かあるのかと視線を向ける。

「……………………………」 

 パンダ。

 小さいパンダが竹を食っている。

 パンダはこちらに気づくとさっと竹に隠れて姿を隠す。……隠れきれず、尻が出てるが。しばらく見てると大人が現れてさっと子パンダを連れていった。

「買うなよ……」

 ひとりそうツッコミを入れるが、聞いてくれたのは「ワン!」と鳴く愛犬だけだった。

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