道端の花束
道端に、花束があった。
そこそこ交通量の多い道。そんな場所の隅に、ひっそりと置いてあるそれを発見した。
(……事故なんてあったか?)
近くに住んでいるが、ここで死者が出る事故が起きたとは聞いたことはない。なんとなく立ち尽くしていると、肩を急に掴まれてぐいっと引っ張られた。
高校生らしき少年。それとほぼ同時に、先ほどまで自分がいた場所を、スマホ運転の自転車が猛スピードで駆け抜けていった。
「危ねえぞ」
「あ、すいません……。ありがとうございます」
少年に礼を言い、もっと道の端に移動する。本当に危なかった。あのスピードでぶつかられたら怪我じゃ済まなかった可能性もある。
「あれ?」
花束がない。さっきまでたしかにあったのに。さっきまで、自分の視線と意識を奪っていたのに。
『……轢かれちゃえば面白かったのに』
「え?」
突然頭の中に響いてきた声。辺りを見回しても、少年はとっくに遠くに行ってしまっているし、他に歩行者はいない。
ただ、さきほどの花束と同じ色の花びらが、ひらりと宙を舞って鼻をかすめていった。
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