神様の愛

 神様たちも新年のお祝いをするらしい。


 お正月の頃には雲の上からとても心地の良い音楽と、たくさんの笑い声が聞こえてきて、とても良い香りもただよってくる。

 そして三日三晩の宴会が終わると、神様が地上に"愛"をくれる。なにかはわからないけど

空からくるとてもとても強い力を持つそれを、妖精さんは愛と呼んでいた。神様がたった一つだけ与えてくれるそれを受け取ると、この世の真理、真実、この世の全てを知れるという特別なものだ。本来それを賜れるのは天上の人たちだけらしいのに、正月は特別に特別に、神様の善意で地上の私たちに与えるらしい。だから、"愛"と呼ばれている。

 誰が貰えるかはランダムだ。人間かもしれないし妖精さんかもしれないしお化けかもしれないし動物かもしれない。ある程度知能がある生き物が対象だそうだ。

「今年は三丁目の青肌の鍛冶屋の妖精さんだったんだね」

『らしいわねえ……』

 青肌の妖精さんの仲間たちが、"愛"を受けた妖精さんを囲っている。鍛冶屋の妖精さんは動かない。目をかっぴらいて、天を見ている。このあとはしばらくすると全身が白く乾いて行き、やがて体は光の粒子となって霧散する。

 人間も、お化けも、妖精さんも、誰が受け取ったってそうなる。世界の真理というのは、地上の生き物にとってはあまりにも重すぎるのだ。生命が、魂が、全てが散ってしまうくらいに。

『こうなりゃもう無理だな』

『おっかないおっかない』

「……………………………」

 神様の愛。それは多分、甘くておいしいからと、飼い犬にチョコレートをあげるような愛なのだろう。

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