差別

 私には霊感がある。だから、お化けや妖精さんともお話しができる。


『差別は良くないわ』

 妖精さんの間にも差別はあるらしい。

 なんでも、金色の妖精さんの中では、羽がない妖精さんは長い間差別の対象になっていたそうだ。

『でもね、やっぱりおかしいわ。そういうの。羽がある、ない、違いなんてそれだけじゃない』

「あなたは違うんだね」

 私が今話しているのは羽がある妖精さんだ。おとぎ話のように、空も飛べる。

『ええ。羽のあるなしに関係なく、おかしいことはおかしいって声を上げなきゃダメなのよ』

 羽のある金色の妖精さんは、力強くそう答えた。


「こんにちは、金色の妖精さん」

『こんにちは、人のお嬢さん』

 道を歩いていたら、別の金色の妖精さんと出会った。今度は羽がない妖精さんだ。

『さっきあなたと話してたの、私の知り合いなの。なんの話をしてたの』

「差別は良くないなって話を聞いたの」

『ああ、そうね。たしかに羽のない私たちは馬鹿にされてきたわ。

 でも私は自分のことを誇りに思っているわ。たしかに羽はないけど、足が強いの。誰よりも速く走るし、跳ぶわ。だから生活にも不便は感じないの。

 羽なしの仲間の中には羽が欲しい羽が欲しいって嘆く者もいるけど、私はそうは思わない。仮に思っても、生来のものだから手に入らないしね。考えるだけ時間の無駄よ』

「自分の生き方に誇りをもっているんだね」

『ええ。大事よ、そういうの』

 近くの空き家から、ガヤガヤと声がする。人ではない声。そして曇りガラスがぼんやりと金色に光っている。

『集会があるのよ。羽のあるなしの差別関係のね』

「行かないの?」

『今回のこれは、羽ありの中での差別を進める側と批判する側の集会だからね。さっきあなたと話してた知り合いみたいなのが参加するもの。

 羽なしが参加するようなものじゃないわ』

 一拍置く。

『それに私、あいつら、嫌いなの』

 声が聞こえる。羽なしなんて仲間じゃないとか、似ているだけの別の種族と言ってもいいとか、出来損ないとか、そういうの。おそらく、今は差別する側がしゃべっているのだろう。

『何を言っているんですあなたたちは!

 差別なんて、あってはならないことです!』

 怒った声が聞こえる。これは、さっきの妖精さんの声だろうか。

『あの子たちだって、羽なしに産まれたくて産まれたわけじゃないのです! そんな哀れな方々を、どうしてそうも見下げ果てることができるのですか!』

 ちらりと、隣の羽がない妖精さんの顔を見る。

 無表情。羽がなくとも、自分の生き方に誇りを持っている妖精さんは少しため息をついて、

『………だから私、あいつらが嫌いなの』

 と、吐き捨てた。

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