お化け屋敷の幽霊

 廃屋へ探検にやってきた。

 

 元は金持ちが住んでたのであろうでかい家。悪友たちは騒ぎながら無遠慮に家の中をうろついている。

「死んだんだよなここ」

「そーそー。持ち主が病気で死んで以来怪奇現象が……」

「なんも起きねえけどなー」

 正直そんなものが起こるとは微塵も思っていない。ただ暇つぶしができればいいのだ。


 きい


 ドアが、動いた。

「ああ……?」

 ドアの近くには誰もいないのに。けれど、ドアはゆっくりと閉まっていく。室内に風はない。窓なんて、開いてない。

 懐中電灯で照らすと、ドアの表面に染みのようなものが次々とできていた。


『 出 て い け 』

『 死 ね 』


 そう、ドアの表面に血文字のようなものがリアルタイムで書かれていく。

 数秒の沈黙のあと、俺たちは窓を蹴破って脱出していた。


*****


 幽霊の夜は早い。

 午後5時にはねぐらにしている廃屋、から少し離れたところにある大きな廃屋に移動する。

 夏場はスリルを求めて不法侵入する不届き者が多いので、こうやって驚かせてやるのだ。そうしたらこの大きな廃屋はお化け屋敷としての名を高め、ますます不届き者がやってくるようになるだろう。

 そうしたら、自分がねぐらにしている小さな家に注目して、わざわざ探検に来る好き者はいないだろうから。

『あんな連中にねぐらに来られたら嫌だしなぁ……』

 そう思いながら、今日も幽霊はがんばって夜は屋敷で人を脅かし、朝昼は静かなねぐらでゆっくりするのだった。

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