肉体変化!
仙台市の街中には、禍々しいものがある。
アーケード街の中には、入っている会社の社員全員が妖精さんやお化けである青いビルがある。みんな人間のフリをするのがうまいので、堂々と町中で暮らしている。人間にばれずに化けることができるのは、高いスキルが要求されるらしく、だからそれを誇示するためにわざわざ町の中で暮らしているらしい。
そしてそんなビルの一角で、恐ろしいものが見つかったようだ。
『いやあ、とんでもないことさ、これは!』
『恐ろしい恐ろしい。捕まってよかったよ!』
「こんにちわ」
『やあ、ニンゲンのお嬢さん! さあさ、見てくれよこれを! ボクが捕まえたんだ!』
『おバカ、女の子に見せるようなものじゃないだろう!』
青いビルの三階のオフィスに、しゃべる狐さんが経営している会社がある。会ったときは人間の世界の話を聞かせて欲しいとせがまれるのだが、今日はわざわざ電話で呼ばれたのだ。
「なあにこれ……」
会社の真ん中にあったのは、巨大な肉塊だった。人と動物と無機物とお化けをぐちゃぐちゃに丸めて肉団子にしたような肉の塊。それになにか機械のような装置が繋がれている。
『おっそろしい化け物が捕まったのさ……』
狐さんいわく、マッドサイエンティスト的な化け物がいたらしい。その化け物は生物を捕まえて自分が開発した機械に繋げて改造して遊んでいたらしい。その化け物の巣は生命の冒涜といえる形の遺体ばかりだったそうだ。
その化け物は捕まったようだが、使っていた機械を狐さんが手に入れたとのことだ。
『ボクが捕まえたんだよボクが。激しい戦いの末にねぇ。こいつはその報酬さ』
『ああはいはい何度も聞きましたとも! 警察がくる前にその機械をちょろまかしたってこともね! それで、わざわざニンゲンのお嬢さんを呼んだのはなんでだい!?』
得意気な社長の狐さんを奥さん兼事務員の狐さんが遮る。いつもこの調子のようだ。
『なにかこれの良い使い方はないかなと思ってね。……こう、金儲けになるようなやつさ。ニンゲンはそういうの得意だろ?』
「これ、何ができるの?」
『肉体を自由に弄れるんだがどうも試作品らしくてねぇ、三十分すると元に戻っちゃうのさ。いやー、戻らなきゃ身長を伸ばす機械とかで売り込めたのに』
「三十分だけかあ……じゃあいっそ三十分だけ自由に変身できるとか、そういうのにしたら? 理想の姿になって撮影ができるとか。衣装……例えばドレスとかもレンタルできるようにして……」
『ほお……なるほど、ひらめいた!』
しばらくあと、狐さんの新しいビジネスは大成功したようだった。予約が何件も入っててんてこまいのようだ。
……おじさんのお化けや妖精さんが、美少女になれる機械として。連日たくさんのおじさんが、理想の美女や美少女になるべく大枚をはたいているという。
「女の子がお姫様になる……とかそういうのを想定してたんだけど……」
『男ってやあねえ』
事務員の狐さんが煎餅をかじる。ぱりっという小気味良い音が、広いオフィスの中に響いた。
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