双子の兄

 中学のとき、自分が両親と血が繋がっていない上に、生き別れの双子の兄がいることを知った。


「お前とお前の兄さんが産まれてすぐ、本当の親は事故で死んでしまったらしいんだよ。他に育てられるような人がいなかったらしくて、乳児院にいたところをうちが育てることにしたんだ」

「お兄さんもいっしょに育てられたら良かったんだけどね、お兄さんは先に貰われていっちゃってたから」

「はあ……」

 驚きはしたが、だから全然似てなかったんだなとどこか冷静に納得したことを覚えている。血が繋がってないのに我が子のように育ててくれた両親には感謝している。

 ただ、双子の兄の存在は気になってはいた。自分の片割れ。顔はそっくりなのだろうとか、どんな性格なのだろうとか、話したら仲良くなれるのだろうかとか、どんな人生を歩んでいるのだろう、とか。

 だがこのご時世である。親が持っている情報以上のことを知ることはできず、心の片隅でほんの少しばかり気になりながら、時は流れ大人へとなった。


「……………………」

 たしかそのときは小雨が降っていたと思う。趣味の沢釣りを終えて山道を降りていた俺の目に、行きのときにはなかったそれが飛び込んできた。

「………………………………………」

 首が異様な伸び方をした、首吊り死体。まだ何もかも真新しい、けれど全てが手遅れな首吊り死体。

 それは、自分とまったく同じつくりの顔だった。

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