私の結末
三丁目のマンションのエレベーターのボタンを****して3回*****4****してから***を待ってそれから**************をすると、異世界にいける。
*****
それは誰もいない世界だ。
人間がいなくなって数ヵ月後、といったようだろうか。都会は緑に侵食され、野性動物もそこらへんに堂々と姿を現している。
ときどきそこにあるとあるマンションのの屋上でぼんやりする。誰もいないから、静かでいい。いつもいつもついてくる不動くんだって、この場所は知らない。
でも、今日は別の人がきた。
「………………………」
「へえ……」
20代半ばくらいの大人の女性。量販店のスーツを着たその女の人は、私をチラリと見たあとに、スタスタと歩いてフェンスを乗り越えようとする。
「……死ぬの?」
「うん」
「……いいの?」
「うん」
ややあって、フェンスの向こう側のわずかなスペースに乗ることに成功した。そしてその人はフェンスを緩く掴みながら、くるりと振り返り私を見つめる。
「あなたは、こんな風にならないでね」
「……できたら、そうしたいかな」
「じゃあね」
そして女の人は躊躇うことなく飛び降りた。
マンションを降りると死体があった。そばには女の人がもっていた鞄がある。その中を見ると財布があり、免許証があった。
『三島 千花 25歳』
「……………………………………」
多分、平行世界かなんなのか、別の世界を生きていた私なのだろうか。ここにいるとときどき元の世界でも見たことがないお化けが一人で歩いていたり、どう見てもただの人にしか視えないのに手ぶらで空を飛んでいたりといった光景を見たことがあるので、平行世界の私くらいいてとおかしくはない。
あるいは、本当に未来の私かもしれないが。
ともかく今の私と同じ手段でここにきて、死ににきたのだ。
お腹を空かせた獣が寄ってきて『私』を食べていく。最期の最期まで見守る気はないので、私はその場を離れてマンションのエレベーターに戻り、元の世界に戻る。
私の結末はやはりこうなのかなあ、と思っていると、スマホが鳴る。
『あ! 三島ぁ、あのさあ聞きたいことあんだけど』
聞きなれた大きな声が、電話の向こうから聞こえてくる。
『俺たちが前世で運命的に出会っていた可能性についてなんだけど』
「何の話?」
騒がしい日常が、あっという間に戻ってきた。
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