真夜中の散歩

 ときどきある眠れない夜は、朝になるまで近所を散歩して過ごしている。


「寒いよね」

「もう冬近いからな」

「なんかあったかいの飲みたいよね」

「あったかいやつか~。コーヒーって気分じゃないよな」

「おしることか、コーンスープとか?」

「いいねえ。けど粒が残るのは気になる」

「缶の底ポンポンする?」

「する~。貧乏くせえかな?」

「え~そんなことないよ。やっぱ気になるじゃん」

「だよな。あ~なんか本当に飲みたくなってきた」

「ここら辺自販機あったっけ?」

「おー、ここ上ったところの神社の境内」

「行く?」

「ああ。おしるこがいいかな」

「そう。じゃあね~」

 そこまでしゃべって、気付いた。

 石段を上り始めた自分の足。振り返った先には誰もいない。

 一人で散歩していたのに、今まで自分は誰と話していた?

「ふえっくしゅっ」

 突然吹いた風に体が一気に冷やされくしゃみが出る。朝日が外を照らし始めた、そんなときの出来事だった。

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