VTuber
人気VTuberがいた。
素性どころか素顔もわからないが、とにかくガワはかわいくて声もかわいくてトーク力があって頻繁に更新されていたので人気があった。主にフリーゲームやsteamで配信されているゲームと、ネット配信されている映画の実況を視聴者と一緒の時間に再生して(画面には映像は映さない)いっしょにおしゃべりをしながら見る生配信で人気を稼いでいた配信者である。
『今日はねー、前に紹介してもらったこのゲームやりまーす』
今日も彼女(多分)は派手な見た目にそぐわない古い和室で配信を始めた。ワイプの隅に映るのは色落ちした畳と背丈を計ったような傷がついている木の柱だ。視聴者たちはもう見慣れてしまっているので、話題にもしない。
おぉい……………
どこからか、声がした。
『えー……?』
おぉい……………
低い男の声。生気のない声。
確実に、家の中からする声。
『え、今日あたし一人しかいないんだけど』
視聴者から警察を呼べと一斉にコメントがきたが、VTuberはそれを無視して『ちょっと見てくるね』と言って配信を切った。
それっきり、配信はない。毎日更新していたSNSもぴったりと止んだ。
心配した視聴者は、彼女(推定)と仲が良かった別のVTuberに連絡を取った。リアルであったことないが一度贈り物をしたので住所を知っていたそのVTuberは、警察といっしょに家を訪れた。
家はほぼ廃屋といって良い建物だった。配信をしていた部屋だけがきれいに片付けられていて、他は雨漏りがひどく腐っている場所もある。
警察の調べだとかつてこの家に住んでいた一家がいた。一家は事故により妻は死亡、夫は植物状態に、娘は施設に預けられていた。
そしてVTuberが消えた日はかつて家主であった夫がついに亡くなった日であり、VTuberへ投げられたスパチャやプレゼントは、全て一人娘が暮らしている施設に寄付されていた。
現代の飴幽霊、のちにそう語られることとなった。
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