異世界エルフと会う方法
異世界に行く方法というものがあるらしい。
「ガセだったよ」
「やっぱりー?」
「異世界のエルフの村で無双したかったなー」
「あはは」
近くの男子高校生が、そんな話をしていた。インターネット上で伝えられる、“異世界に行く方法“。誰もいないエレベーターで手順に従って上下に移動すると、異世界に行くことができるという。
私も試したことがあるけれど、特になんの変化もなかった。
────異世界には、どうやって行くの?
私は霊感があるので妖精さんたちとお話ができる。だから昔質問したことがある。妖精さんたち曰く、異世界に行く道とこの世界がときどき繋がるときがあって、たまたまそのときそこにいた人が異世界に行けるという。
つまり、運だ。望んで行けるようなところではないらしい。
「トラックに轢かれて死んだと思ったら異世界に移動してチート能力をゲットして巨乳エルフを彼女にしてだな」
「まーだ言ってる」
そういうの流行ってるよなあとぼんやり考えながら歩いていると、遠くから悲鳴が聞こえた。
トラックが、こちらのほうに一直線に。
一瞬の出来事だった。私はギリギリ進路から外れていたが、私より前にいた人は巻き込まれた。
血と慟哭が、現場に満ちる。
「首が見つからないんだって」
一週間経った現場には献花が多い。結局一名が犠牲となり、多数の重傷者を出した居眠りトラックの追突事故。その犠牲となった少年の首だけが、未だに見つからないという。
「かわいそうにね」
「潰れちゃったのかな」
「でもそんな痕跡ないってニュースで……」
みんな、そう言う。でも彼が死ぬ前に言っていたことを、思い出す。
────トラックに轢かれて死んだと思ったら異世界に移動してて……
もしかしたら、どこかの世界のエルフの村に、人間の生首が落ちているかもしれない。
そんな風に思いながら、献花の前を通り過ぎた。
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