自殺少女
俺には霊感がない。
ないから、俺の肩がある日急に重くなった理由について、なんとなく察しはつくけど確信がない。
『不動くんのことが大好きです。なので死にます』
隣のクラスの女子がそんな遺書を残して自殺した。本当に勘弁してほしい。たしかに俺は、数ヶ月前に彼女にしてくださいと告白されたときにお断りした。「今好きな子いるから無理」というまったく問題ないフリ方だ。相手の子も同じクラスになったこともない、よく知らない子だった。
けれどなんせこの死に方。相手の親には怒鳴り込まれるわ教師からの取り調べはあるわでひどく面倒くさかった。数ヶ月前のことだということもあり、悼む気持ちよりも「なんで今更」という思いのほうが強い。
そして、ちょうどその頃から、酷く肩が重くなった。昔から肩凝りしやすい体質ではあるが、最近は異常だった。友達の一人が「そりゃ憑かれてるんだろう」とからかってきたが、たしかにそうとしか思えないほどの酷さなので、思わずちょうど自分の席で読書をしていた三島に声をかけた。
「三島ぁ、本読んでるとこちょーっとごめんな? あのさ、俺に何か憑いてる? お化け的なやつ」
「この間死んだ子でしょ? お祓い行ったら?」
顔が引き攣る。後ろで様子を伺ってた俺の友達は面白がって囃し立て始めた。笑いながら神主が榊を振る真似をするのが腹立たしい。
「え、マジで憑いてんの?」
「うん」
「えー……そんな酷いフリ方だったかな……」
「違うよ。フラれたから死んだんじゃなくて、気付いたから死んだんだよ」
三島はそういうと、席を立って無遠慮に俺の机の中を漁りだした。そして席の主である俺ですら見慣れない小さな黒い板を取り出して、机の上に置く。
それはまるで、テレビで見た盗聴器のような。
「お化けになって取り憑けば、こんな小細工する手間がなくなるでしょ?」
三島は無感動にそう伝えて、自分の席に戻る。
引き攣った顔の俺と、引いている俺の友達。そして死人が遺した妄念が、教室の一角にいやに静かな空間を作り出した。
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