変な男

 私にはいとこがいる。千花っていう、かわいいけど自称霊感少女の変な子だ。


 そんな子なせいなのか単純にかわいい子だからなのか、昔から変な男に絡まれることが多い。プレゼントに自作ブロマイド贈ってくる男とか、コートの下にパンツしす

か履いてない変態とか、宇宙についてずっと語ってる男とか、ずっと叫んでる男とか。本人はゲンナリして愚痴を吐き、私はおとなしく愚痴を聞く。正直、聞くだけなら楽しい。そんなトンデモ男が存在してるという事実は楽しい。

「…………………面白がってるでしょ……………………」

 いつだったか、恨みがましそうな顔でそう言われてしまった。

 さてある日、街を歩いていると千花が男連れで歩いていた。男連れというか、つきまとわれているというか。また変な男に引っ付かれたのか。

(……いや、イケメンだなー) 

 今日の男はプロポーション抜群のイケメンだ。もしかして、今日はただのナンパなのだろうか。

 ナンパか変な男か見極めるために近付いてみる。

「千花~」

「うわ……」

 うわってひどくない?

「何してるの?」

「絡まれてる」

「絡まれてるって~ひどいな~」

 イケメンは軽快にぺらぺらと喋るが、千花はいつものように仏頂面で押し黙っている。

「えー、あそこでバイトしてるんですかぁ? 私最近良く行くんですよ~」

「そうなんだ。今度さ、新作のパフェ出るから俺がシフトいる時間に食べに来てよ。サービスするよ~」

 千花が黙っている間にイケメンと仲良くなった。この感じだといつも千花に絡んでるような変質者じゃなくてただのイケメンか。

「あ、待ち合わせの時間そろそろだ。じゃあこのへんで」

「そう、残念。じゃあお店に来てね~」

「はぁい」

「……………………………………」

 まったくまともそうなイケメンなのに、千花は相変わらず一言もしゃべらない。変な男にばかり絡まれてるからって警戒心強すぎるぞ、千花。



*****


「ありがとう! やっぱり神様っているのかなあ。きっと昨日ごみ拾いしたからかな? 善行をすると良いことがあるね!」

「はぁ…………………」

 さっさと帰れ、と思っているうちに男はさっさと帰っていった。

「まさか本人が来るとか……」

 あの男は、薫ちゃん狙いだ。薫ちゃんを落とそうとして、親戚である私に近付いてきたのだ。それだけなら悪いことではないのだろうが、数々の変な男に絡まれてきたからわかる。あの目は……なにかある男だ。まともそうなフリをして、心の底になにかある男だ。だからスルーしてたのだが。

(まあいいか……)

 薫ちゃんは趣味が悪いから私が変な男に絡まれている話を、他人事なので嬉々として聞いている。たまには自分も絡まれてしまえばいいだろう。

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