丑の刻参りをした

 丑の刻参りをした。


 どうしてもどうしてもどうしても憎いやつがいた。できうることからこの手で首をしめて、ナイフで刺して、抉って、刻んで、ありとあらゆる苦痛を与えて殺したかった。

 だがあんなやつのせいで自分の人生が終わるのも嫌だ。あんなやつのせいで殺人犯になって刑務所で過ごすなんて絶対にごめんだ。でもどうにか復讐はしたかった。

 だから、丑の刻参りをした。

 白装束を着て、蝋燭を立てた鉄輪をかぶって、夜の森へ。ざわざわと風が鳴く真っ暗な夜の森も復讐心があれば怖くなかった。昼間のうちに下見して決めていた場所へ足を進めるが、人の気配がないか、それには十分に気を配らねばならない。

 丑の刻参りは他人に見られてはならない。丑の刻参りを他人に見られたら失敗する。

 有名な話。ここまでやっておいてそんなので台無しにするわけにはいかない。

 周囲に気を付けつつ歩みを進み目的地に着く。周囲をじっくりと観察する。いない。いない。人の気配はない。よし、これなら大丈夫。

 藁人形を杉の木に押し付け、釘を刺し、金槌を振りかぶった。


『ただいまー』

『おかえり』

 まだ夜明け前の森。大きな木の洞。それが私たち森の妖精のお家。

『また夜の散歩かい』

『楽しいの。今日も変なものを見つけたの』

『何を?』

『白い服を着たニンゲンが、木に変なものを打ち付けてたわ。ニンゲンは夜は寝るって気いてるのに、変なの』

 

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