人間の食べ物

 住み処にしている家の人間が、ひどく美味しそうに食べているものがある。


「できたできた。ホイル焼きがうまいんだよな~」

 いそいそと酒らしき飲み物を用意して、"ホイル焼き"とやらをつまみに一人で酔っぱらってぐでんぐでんになっている。

 ……あれはそんなに美味いんだろうか。

『よいしょ、よいしょ』

 人間は完全に寝ている。家具も食べ物も何もかもでかいから苦労したが、その料理の残りを少し回収した。酔っているからばれないだろう。

『冷めてるな。明日の仲間の集まりで温めて食べるか』

 そして翌日、"ホイル焼き"を土産に集会へ行く。集会といっても話し合いとかではなく、仲間内で外で食べて飲んで踊るだけだが。

「こんにちは、妖精さん」

 住み処の人間とは違う人間がきた。メスの人間だ。人間はこちらのことが見えないはずなのに、なぜかこの個体には見えるらしい。

『こんにちは、お嬢さん』

 仲間の一人が挨拶を返す。

「何をしているの?」

『食べて飲んで騒ぐのさ。そうだ、こいつが人間の家から"ホイル焼き"ってのを持ってきたんだ! これから食べようと思うんだがこれは美味いのかい?』

 こら、かっぱらってきたのがバレるじゃないか。そういうのにうるさいやつだったらどうするんだ。

「ああ、これね」

 そうして人間は"ホイル焼き"をつまみ上げて潰してしまった。

『ああ、なんてことを!』

「あなたたち、これがなんなのかわかる?」

『食べ物だろ?』

「にんにくと玉ねぎのホイル焼きだよ? あなたちには毒じゃない?」

『にんにく! 玉ねぎ!』

『なんということだ!』

 発熱や下痢を引き起こし、最悪死んでしまう毒ではないか! なんと恐ろしい食べ物だ!

「人間は食べすぎなければ平気だけどね。人間の食べ物盗んじゃダメだよ」

 そう言って人間のメスは去っていった。

『こんな毒物を食べても平気なのか……』

 人間、よくわからん生物だ……。

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