薔薇の小人は拾っている

 私には霊感がある。

 幽霊、お化け、妖怪。私にはなんでも視える。みんなは私のことを頭がおかしいって言うけれど、視えるものは視えるのだからしょうがない。


 3丁目の山田さんの家の生け垣に住んでいる小人さんは、今日も染め物に精を出している。

「こんにちは、薔薇の小人さん」

『こんにちは、大きなお嬢さん』

「今日は何を染めているの?」

『汚れたドレスを染めているの。見て、元々染みだらけだったのに、今はこんなに真っ白になったわ』

「わあ、すごい。それは何で染めているの?」

『屋根の上に乗っかっていた歯を砕いて溶かしたの。とっても大変だったけど、これほど美しく染まるならやった甲斐があったわ』

「よかったね。でも歯はあんまり見つからないよね」

『そうなの。

 ふふふ、でもね、私見つけちゃったの。あっちにある倉庫にね、いっぱい落ちてたの。たくさんたくさん拾ってきたわ。宝の山よ。それでもまだまだ残ってる。とてもじゃないけど、全部は持ち帰れなかったわ!』


 私は帰りにその倉庫に寄ったあと、警察に通報した。

 ヤクザの抗争の末の殺人事件に、町とニュースはにわかに騒然としたのだった。


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