とっても危ない
どうしよう、呪われてしまうかもしれない。
川で採って捌いた魚の胃の腑から、『それ』は出てきた。その悪魔の輝きに妖精たちは魅いられ、争い、何度も何度も血が流れたという。もはや村では名を呼ぶことすら忌まわしいこととされ、今の時代となっては正式な名前は伝わっていない。ただ、触れると血に餓えた悪魔と化すから絶対に触れてはならないとされている。
どうしよう。触れてはいないが、『それ』を目の前にしているこの現場を他の妖精に見られたら、悪魔に魅いられた者として村八分にあってしまうかも。
「こんにちは、妖精さん」
『うわあ!』
突然話しかけられてびっくりした。同族ではなく、珍しく妖精が視えるニンゲンの子だ。
『ああ……そうだ、見てくれよこれ! 美しいだろう!』
「ほんとだ。きれいだね」
『気に入ったかい? 気に入ったのならあんたの髪を三本と交換してくれないかい? ニンゲンの髪は工芸に使えるからな』
「いいけど……これきれいだし価値がありそうだよ? いいの?」
『ニンゲンの世界では価値があるのかい? 俺の世界ではそうでもないよ』
「そう。ありがとう」
ニンゲンは長い長い髪三本と『あれ』を交換してくれた。
ああ儲けた。無料で手にいれたようなものだ。こんなに長くて美しい髪は、編み物が趣味な女房に渡したらさぞ喜ぶだろう。
ニンゲンには悪いことをしたなと思うが、弱肉強食、生き物というのはずる賢いやつが生き残るのが常なのだ。
*****
妖精さんから、髪の毛と交換できれいな石を貰った。
「砂金……」
だと思う。本物かは分からないが。けっこう大粒だ。
「換金とかできるのかな……」
そんなことを呟きながら、ネットで「砂金 換金」と検索エンジンに打ち込んだ。
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