第135話愛の夢

窓の外は春の夕闇。

一人音楽室で、リストの「愛の夢」を弾いていた。

「出来るだけ華やかに、音を響かせて」

思い出すのは彼女の指摘。

その彼女は既にこの国にはいない。

旅立ったのは今日の朝。

辛いけど見送りはした。

出来るだけ泣かないようにしたけれど、飛行機が飛び立った瞬間、泣けてきた。


「きっともう逢えない」

それはわかっている。

愛する男と結婚するのだから、どうにもならない。



「数ある失恋の一つ」

そう思うしかないのだけど、寂しさは当分続く。


そう思ったら、ピアノに涙が落ちてきた。

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