第185話ほどほどの懸想(4)堤中納言物語

いかにも当世風の筆跡、キラキラとした才気あふれる散らし書きなので、男は

「なかなか、やるなあ、お洒落だ」と心が惹かれてしまい。じっと見つめて座っています。

すると、主人の頭中将様が、その様子をご覧になっていたのか、後ろからいきなり手紙を奪い取ってしまうのです。


「これは誰の手紙なんだ」

と、男をつねりひねりしながらお聞きになるので

男は

「八条宮の女の許に送った手紙の返事ですよ」

「向こうも、半分お遊びで返してきたのです」

と申し上げます。


ただ、八条宮邸については頭中将もツテがないかなあと思っていたらしく、目を留めてご覧になります。

「同じ場所だから、少し熱を込めて気持ちをこっちに引きつけてくれ、その女を姫宮への手引にしようと思う」

頭中将は小舎人童を呼んで八条宮邸の様子を詳しく報告させます。

すると頭中将は

「本当にお気の毒だ、故宮がご健在の時からは、考えられない」

とお嘆きになる。

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