第125話自分勝手な女(1)

「ねえ!ぼんやりばかりしていないでよ!」

ルチアはジャンのことを、いつも怒っている。


「本当に、デートにも誘ってくれないし!」

「服も宝石も何も買ってくれないじゃない!」

「友達のイレーナなんか、彼氏から毎日何かもらっているのに!」

「デートだって、美味しい所ばかり!いつも自慢されて気に入らないの!」

「ほんと、恋人を誘う稼ぎもないの?呆れちゃう!」

・・・・・

たいていは、いつもこんな感じ、ルチアは一方的にジャンを責めまくり、ジャンは黙り込むだけである。



ただ、ジャンがルチアに対して、何もしないのは理由があった。

その最大の理由は、「ジャンがルチアを好きではないこと」である。

ジャンがルチアに対して、感じているのは「単なる幼なじみ」だけ。

ルチアの「どうしてものお願い」で、一度だけ、ルチアの女友達イレーナとその彼氏に逢ったことはある、それも「その時だけの彼氏役」の約束だった。

つまり、彼氏がいないルチアの「見栄」に付き合っただけである。


しかし、どういう勘違いか、ルチアは勝手にジャンを彼氏にし、日々責め立てる。

それが続き、ジャンの友人の中には、その責め言葉のキツさに、同情を寄せるものが出てきた。


「ジャン、嫌いだったら嫌いって言ったほうがいいよ」

「ジャンとルチアって合わないって」

「結局、ルチアの見栄で付き合っただけでしょ?そんなの愛じゃない」

「やさしすぎるのも罪だよ」


いろいろ悩んだ末、ジャンはルチアにはっきりと告げた。

「僕は、幼馴染で、ルチアが心配で付き合っただけ」

「僕にも、いろんな声をかけて来る人が他にいる」

「ルチアはルチアで、納得できる人を探したらどう?」


ルチアは、茫然として何も言えなかった。

「ごめん・・・言い過ぎた」

何とかして言おうと思ったけれど、無理だった。


ジャンは、ルチアに背を向け、「見知らぬ彼女」の所に手を振り、歩いていく。




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