第126話自分勝手な女(2)

ジャンに去られてしまったルチアは、イレーナにしきりに愚痴をこぼす。

「だいたいね、お情けで私の恋人役をやらせてあげたのに、他の女と付き合うって、どういう了見なの?」

「付き合ってあげている時だってさ、何もしてくれない」

「デートも宝石も、なし」

「車だって、ロクな車じゃない、貧乏ったらしい車でさ、乗っていて恥ずかしかったもの、だからキスなんてしてあげない」


イレーナは、ほぼ呆れている。

「それじゃあ、ルチアはジャンに何をしてあげたの?」

「そもそも、どうしてジャンを恋人役にしたの?」

「幼なじみだけなんでしょ?」


ルチアはイレーナの呆れ顔が気に入らないようだ。

「あのね、それはジャンへの同情なの、幼なじみってだけ」

「そもそもジャンへの気持ちなんか、からっきしない」

「ジャンは無能で男の魅力もない、だからあくまでも同情だよ」


イレーナはますます呆れた。

「それじゃあ、他の男を探せばいいだけでしょ?」

「そこまでジャンを嫌いなら、ジャンの文句を言う前に、好きな人を見つければいいのに」


ルチアは、イレーナの呆れ顔が本当に気に入らないようだ。

「あのね、私が愛を捧げてあげる男は、仕事が出来てお金があって、私にキチンとサービスができる男でしかないの」

「難しいのは、そういう男には、ほとんど女がついているしさ、奪い取るのも面倒、オコボレも欲しくない」


とうとうイレーナは我慢が出来なくなった。

「ルチア!」

「あんたみたいなね!ただ欲しがるだけの高慢女なんか、どんな男も来ないって!」

「顔も十人並、体型だって菓子を食べ過ぎで、ブクブク!」

「出るのは欲求と文句だけ!」

「そうやって何人に振られたの!」

「ジャンだって、最後の望みでしょ!」

顔面真っ青になるルチアにイレーナがトドメの一言。


「私もルチア、あんたとは絶交する!」

「あんたは自分の自慢と男の文句しか言わない」

「自分の努力なんか、何もない!」

「これからは、鏡に映った自分でも相手にしたら?」

「その、だらしなく太った身体とデートしたらどう?」



ルチアはそこまで言われても、変わらなかった。

相変わらず大人しそうな男や女を見つけては、同じことを繰り返した。

そして死ぬまで、愛を捧げられる男は、見つからなかった。

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