第61話小悪魔か堕天使か

この寒いのに、美佳は買い物と称して、引きずりまわす。


たいていは、全く興味が無い店に限って、美佳は長々と店員と話し込む。


それより困るのは、下着売り場まで連れ込むこと。


そういう場所は、恥ずかしい上に、そもそも必要がない。


今日はほんとうに、その時間が長かった。


「他の店を見る」なんて言ったら、思いっきりの回し蹴りが飛んで来た。


仕方ないから、通路のベンチに座ってボーっとするしかない。


「ああ、面倒」と思っていたら、「恐怖のこっち来て」コール。


「ねえ、これってね、大きく見えるんだって!」

「ちょっと試着するから、もう一回呼んだら見てくれる?」


ケラケラ笑っているが、本気顔。

こいつは、小悪魔か堕天使に違いない。

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