第200話侮蔑と真心(3)

「う・・・ここは・・・」

ジャンが目覚めたのは、街中で襲撃されてから三日後。

しかし、おぼろげに見えるのは、白い天井だけ。

首も身体も痛みがひどく、十分には動かない。


「起きられたかな」

目覚めたジャンの顔を、修道着を着た大柄、初老の男が覗き込む。


「はい・・・ここは・・・」

ジャンの言葉は続かない。

何しろ、口の中も切れたままなのか、相当に痛む。


「無理はしないでね、ジャン」

「ここなら大丈夫だから」

今度は、大人の女性の声が聞こえてきた。


「なぜ、自分の名を知っている?」

「ここなら大丈夫とは?」

ジャンは、不思議に思うが、言葉が出ない以上は、会話も無理。

こうなると、次の言葉を待つしかない。


「あなたの街とは違います」

「あなたの名前は、着ていた服に刺繍されていたから」

女性の声は、そこまでは聞こえた。


「そういえば、服も替えてもらったのか」

「いつもの、仕事着ではない」

ジャンはそこまで気づいたけれど、そこまでが限界だった。

何しろ、まだ眠くて仕方がない。

その目も虚ろになった。


「さて、痛み止め程度だけれど、かなり苦い」

修道着の男が、ジャンの口の中に何か液体を流し込んだ。

ジャンは顔をしかめるが、一瞬にして、眠りの世界に入ってしまう。

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