第251話階下の圭子さん(1)

さて、大学に入学して、四ヶ月目。

男の一人暮らしにも慣れ、自由を満喫するのは、素晴らしい。

しかし、まだ梅雨明け前と言うのに、どうも身体がヘトヘト。

梅雨明け前と言っても、暑いカンカン照りの日もある。

それだから、夏バテと言っても、それほど恥じることもないのだけど。


ただ、自分自身でも、本当の理由はわかっている。

食べ物というモノを、かなり減らすハメになった。

とにかく、金がない。

仕送りは、定例通りにあったけれど、「ついつい」使ってしまったのである。

ただ、使ってしまったといっても、フラチなモノに使ったのではない。

しっかり勉強するための「本」を神保町で買ったのである。

その「本」が結果的に高額であったため、財布がほぼ、仕送り前の状態になっただけである。


「うん、身体もかなり細くなった」

「何しろ、冷蔵庫には水しかない」

「一番安く、口に入るものはないか」

「というか、この場合、アルバイトでもして、日銭をかせぐしかないだろう」

「とにかく五千円でもいい」


目標が決まれば、俺の行動は早い。

ある意味、後先を考えないこともあるけれど、それはまた別の話だ。

そう思って「アルバイトだーーー」で、アパートの階段を駆け降りる。


・・・が・・・とんでもないことが起こった。


雨に濡れた階段と、滑りやすいサンダルが原因。


「ドタドタドタドタ・・・ドスン!」

転がり落ちてしまった。

おまけに、アチコチ擦りむく。

薄手の服だから、それも・・・ヤバイ・・・


でも、何よりヤバイことは、階下の人が出てきてしまった。

しっとり上品お姉さんの、圭子さんである。


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