第116話痛風を喜ぶ女(2)

美紀からもらった痛み止めは、かなり効いた。

そのため、夕方には多少痛むものの、歩くことはできた。


押し掛け女房を断ろうと思ったけれど、言い出す前に言われた。

「ああ、決めたことはやるの、文句を言うんじゃないの」

「誰の薬で歩けるようになったの?」

そう言われてしまうと、反論など出来ない。

もし、今の痛み止め薬の効力が切れれば、また痛むかもしれない。

それも重要な要素である。

美紀にその薬の名前を聞いて、自分で買うことも考えたけれど、まだ薬局まで歩く自信もない。


結局タクシーで美紀と帰った。


「とりあえず寝かせて」

ほぼ懇願。


「仕方ないなあ・・・もう・・・心配かけて」

「飲み過ぎだって言うの!」

美紀はブツブツ言いながら、いつもの「部屋の点検」をしている。


「何もないだろう?」

確かに一昨日掃除した記憶がある。


「うん・・・珍しく成果がない」

「アヤシイ本もない、つまらん」

何の文句かわからないけれど、文句を言っている。


「しょうがないなあ・・・先にお風呂入るよ」

「少し寝ていていいよ、後で煮物作る」

美紀は、ようやく諦めたらしい。

少しは「勝ったぜ!」という気持ちになった。



「でも、つまらないから」

美紀は変な笑い方をした。

こういう場合は、危険な兆候になる。


「おいおい!」

美紀はお風呂と称して、自分から目の前で脱ぎ始めてしまった。


「おーい!目の毒かなあ!」

「残念だねえ!歩けないねえ!」

またしても悪魔に近い言葉である。


「・・・目の保養にしておく」

せめてもの抵抗をした。


「あら・・・珍しい・・・」

美紀は「そのままの姿」で近づいて来た。






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