第53話ジャズバー(2)

ジャズバーに入ると、ピアノ、ベース、ドラムス、サックスのコンボ。

ゆっくり目のバラードを演奏している。


「あら、雅君、新しい彼女?」

席に座ると、馴染みのウェイトレス・・・といっても二つか三つ上の美由紀が、お水とおしぼりを持ってくる。

祥子が言うほどアヤシイ雰囲気はないけれど、最初から変化球を投げて来る。


「美由紀さん、新しいではないでしょう!」

「せめて新しくにしてもらわないと」

雅は焦っている。

なんとか訂正してもらわないと、祥子に足を踏まれていて痛くてしょうがない。


「はいはいっと・・・新しくね」

一応は頷きながら、指折り数えているし・・・


「で、いつものバーボンでいいの?」

「そちらのお嬢ちゃんは?」

美由紀は、ニコニコである。

とにかく、からかいたくて、仕方がないらしい。


「うん、いつものバーボン」


「・・・私も・・・同じのください・・・」

祥子は、かなり無理をしている。

ビール一杯で、顔が真っ赤タイプなのに・・・


美由紀はクスクス笑いながら、戻って行った。


「それほどアヤシイ?」


「音楽は、かっこいい」


「アヤシイ女なんかいないだろ?」


「まずは新しいってのがアヤシイ、指折りの意味も徹底追求 問題その1」


「え?」


「服装は地味だけど、私よりスマートで胸が私より大きいが、問題その2」


「・・・あのさ・・・そういう話は・・・」


「じゃあ、お部屋に有ったグラビア写真は何?」


「えーっと・・・それは・・・」


「どうせ酔うから、後で介抱してください」


「ああ、祥子の家まで送るよ」


「・・・だめ、雅さんの家がいい・・・」

祥子は、再び足を踏んできた。


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